活性化したマクロファージや好中球は様々な状況で、リソソーム酵素を放出することが知られている。最近私達は、この過程を担う候補分子を同定した。私達はこの分子が細胞膜とリソソーム膜に局在しており、カルシウム刺激で両者の膜リン脂質ホスファチジルセリンと互いに結合することによって、リソソームと細胞膜の融合を促進することを見出した。そこで私達は、この分子のKOマウスを作製し、実際にこのマウス由来のマクロファージや好中球でリソソーム酵素の放出が障害されていることを確認した。次に、KO マウスに心血管炎症を誘発する刺激を与え、野生型マウスと比較することにより、マクロファージや好中球によるリソソーム酵素の放出が病態発症に及ぼす影響を調べることにした。すると、野生型マウスでは、動脈瘤が効率よく引き起こされるのに対し、KO マウスでは、動脈瘤の発症頻度が顕著に減少していることが明らかになった。一方、生体内におけるリソソーム酵素の放出を可視化する為、MRI の強いプローブである19F ナノ粒子を用いた。 19F ナノ粒子はガドリニウム錯体で周囲を覆うと、シグナルが打ち消される。そこで、ガドリニウム錯体と19F ナノ粒子を、リソソーム酵素の認識配列を含んだペプチドでつないだプローブを作製した。このプローブは、リソソーム酵素により、このペプチドが切断されると、ガドリニウム錯体が外れ、MRI で検出可能になる。実際に、カテプシンK の認識配列を含んだプローブを作製してみたところ、このプローブは通常状態でMRI で検出されないが、カテプシンK を作用させると、強く検出されるようになることが明らかとなった。今後、生体内での応用が期待される。
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