申請者は『アレルギーの原因となる抗原特異的IgE抗体を、IgAにスイッチさせる治療』の可能性を探ってきた。IgAは粘膜に分泌されるため、この治療法によっ てIgE抗体によるアレルギー反応を抑制するだけではなく、腸管や気道粘膜からのアレルゲンの侵入を防ぐ効果も期待出来る。しかし、ナイーブB細胞とは違っ て、IgEにスイッチした細胞をIgAにクラススイッチさせることは難しいことも知られている。本研究では、IgEにスイッチしたB細胞においてもクラススイッチを 誘導できる因子を見出すことによって、最終的にアレルギーの治療に応用することを目指している。具体的には、申請者らが以前見出したクラススイッチ組換えしやすい細胞集団と、形質細胞に分化しやすい細胞集団の遺伝子発現の違いを調べることによって、IgE発現細胞にIgAへのクラススイッチを誘導できる可能性を持つ因子の同定を目指した。しかし、この実験ではあまりにも多くの遺伝子発現に変化が見られたため、クラススイッチ誘導に必要な因子を絞り込むための二次的スクリーニングが必要なことが明らかになってきた。この目的のため、クラススイッチ誘導に適した新しい細胞培養条件を見出すことに集中した。その結果クラススイッチ誘導を亢進する条件と、抑制する条件を新たに見出すことに成功した。これらの様々な細胞培養条件における遺伝子発現を調べ、クラススイッチ組換えの誘導効率と遺伝子発現が正に相関する遺伝子を検索し、約40種類のmRNAに絞り込む事に成功した。
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