研究課題
多機能アトドレノメデュリン(AM)とその受容体活性調節タンパクRAMP(R)の機能異常の主要病態は多因子性疾患の高血圧である。AM研究をより臨床応用へ近づけるため、我々は最近、論文発表した母性型Cas9を活用する同時多遺伝子編集を用いて多因子性を反映した疾患マウス開発と解析を開始した。高血圧のGWAS解析で変異報告のあるAMを含めたヒト9遺伝子について、その相同域のマウスゲノム配列を解析した。多くはヒト配列と高い相同性は認められなかった。相同性が認められた遺伝子ではマウスでのその変異領域を、無いものは相同のマウス遺伝子自身のタンパク質翻訳配列にgRNA配列を設定・合成した。これら9種のgRNA群は母性型Cas9を含む受精卵に同時導入した。同受精卵は偽妊娠マウスに移植、その仔を得ることに成功し、これらオスを多因子性高血圧症候補マウス群とした。仔マウスは(1)対象遺伝子の変異がそれぞれ異なっており、かつ(2) 殆どはヘテロ型変異であり、事前の想定通りスクリーニングに適していると考えた。本年度は4回実施し、現在、5回目を継続している。これら候補マウスは8週齢-15週齢にかけて血圧(脈拍数、収縮期、拡張期、平均値)を測定し、その数値と各々の遺伝子変異との関係を探っている。一方で、同時多遺伝子編集ための高率ノックイン(KI)技術の開発も試みた。HDR活性によるKI効率改良を目指したため、マウス受精卵のDNA複製期(受精後5-8h)に注目し、CRISPR/Cas9因子(対象遺伝子gRNA、KI用断片、Cas9(母性Cas9を活用する場合は含めず)の導入法検討、および既報のNHEJ活性の阻害剤添加の併用などを実施した。その結果、KI高効率(90%)の場合も得たが安定性に欠けていた。高効率KIの安定取得のための要因解明を含め、マウス初期胚におけるKI最適化条件を探っている。
2: おおむね順調に進展している
母性Cas9による同時遺伝子変異マウス作製法が期待通り活用でき、多因子性高血圧症候補マウス群の作製に成功した。また同時多遺伝子編集ための高率ノックインKI技術の開発の過程で、母性Cas9によるゲノム編集法に関する新規データが得られた(投稿中)。
母性Cas9含受精卵を用いる多因子性高血圧症候補マウス作製は継続し、多因子性高血圧候補遺伝子変異と高血圧との相関性を詳細に明らかとする。さらに先行解析中のAMを含む9遺伝子群に対しては、次候補の高血圧候補遺伝子群から一部の交換による組み合わせ変更も検討する。そして多因子性高血圧症候補マウスの治療の検討を実施する。
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