研究課題
前年度は、ヒト前立腺癌細胞としてDU145細胞をもちいてGFP-Nanogを発現させ、腫瘍増殖の促進と、ICAM-1の発現低下を示した。また腫瘍増殖がNK細胞の感受性低下によることを明らかにした。しかしこれが他の癌細胞でも起こるかどうかを調べるため、ヒト前立腺癌細胞の22RV1にGFP-Nanogを発現させた。これによりICAM-1の発現低下が示された。NanogのshRNAを導入するとICAM-1の発現が回復した。またGFP-Nanogの強発現によりNK細胞の感受性も低下し、腫瘍増殖が促進された。このようにNanogによりICAM-1の発現が抑制され、NK細胞感受性が低下することが明らかになったが、その分子機構を解明する必要がある。そこでNanogのICAM-1 promoter部位への結合サイトを明らかにするためにChIP-seqを行った。4つの予想されるNanog結合サイトのうち、2つにNanogが結合した。さらになぜNanog結合がICAM-1発現抑制にかかわるのかを明らかにするため、ヒストンアセチル化酵素やヒストン脱アセチル化酵素のNanog結合サイトへのリクルートの状況をChIP seq.を施行して解析した。ヒストン脱アセチル化酵素は何れのNanog結合サイトにもリクルートされなかった。一方。ヒストンアセチル化酵素のp300はNanogが結合することによって、1つのサイトへの結合が阻害された。もう1つのサイトにはNanogの有無にかかわらず結合しなかった。前立腺癌の臨床サンプルを用いて、NanogとICAM-1の発現の逆相関があるかどうかを調べた。Nanogの陽性の腫瘍部位では、ICAM-1の発現が低く、ICAM-1陽性の腫瘍部位では逆にNanogの発現が抑制されていた。ICAM-1の発現が高いと5年生存率も延長し、Nanogの発現が高いがん患者は生存率も低いことが明らかになった。
すべて 2017
すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件、 招待講演 2件)
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