研究課題
小胞体ストレスが癌微小環境で惹起されることから、小胞体ストレス応答の網羅的な遺伝子発現解析を行い、新規のncRNAを同定した。予備的解析から同定したncRNAはストレス下での細胞増殖に必須で、しかもその発現はヒト腎癌患者の予後と高い相関を示すことを見出している。本研究では、同定したncRNAと腫瘍形成の因果関係を明らかにし、その分子機構を解明して新たな腎癌治療法の基盤を確立することを本研究の目的としている。平成29年度は、ncRNAによる腫瘍促進効果の分子機構をncRNAとUVクロスリンクして単離したRNAを次世代シーケンサーによる網羅的解析を計画していたが、次世代シーケンサー解析の前の予備実験が上手くいかず、修飾方法を含めて条件等が必要であることがわかり、年度内での実施を断念した。その代わりに、新規ncRNAのノックアウトマウスを樹立することができたので、その解析を優先して行った。ノックアウトマウスはホモでは軟骨形成不全から胸郭が小さいために出生後に肺が十分に拡張せずに死亡することがわかった。一方、ヘテロマウスは野生型と外見上全く違いを認めなかったが、小胞体ストレス誘導剤によって極めて脆弱で死亡率が高いことがわかった。このことから、新規のncRNAの生理的な意義や小胞体ストレス応答での意義について個体レベルで明らかにすることが出来た。
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