研究課題/領域番号 |
16K15242
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
原 万里 三重大学, 医学部, 教務職員 (30176383)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | トリソミックレスキュー / ハプロタイプフェイジング / ゲノム編集 / 核型正常化 / CRISPR/Cas9 |
研究実績の概要 |
多くの常染色体異常症は、特定の染色体の数的異常(異数性)が本質であり、その過剰染色体により知的障害をはじめ多彩な合併症を生涯にわたり生じる。したがって、核型正常化のみが複雑な合併症を防ぐ唯一の根本的な医学的介入であると想定される。本研究では、最も頻度の高い常染色体異常であるダウン症候群をモデルとし、申請者らグループが開発を目指す新規過剰染色体識別技術と最新のゲノム編集技術であるCRISPER/Cas9システムによる配列特異的切断技術を組み合わせ、高精度の過剰染色体消去技術の開発を行う。 平成28年度の成果として、目標としていたハプロタイプフェイジングは未だ途中段階である。期待していた染色体分離法に問題が生じたため、別の方法にてハプロタイプフェイジングを検討している。SNP Typingのマイクロアレイを実施したところ、必要とするアレル特異的SNPの数が非常に乏しかったが、Hap Map project関連情報よりアレル特異的なSNPを約90箇所選択することが出来た。標的となるSNPを数多く選択出来たことにより、配列特異的切断技術における標的SNPの組み合わせ、及び染色体消去技術の選択幅が広がったと考える。また、シングルセルクローニングにおけるFISHを用いたスクリーニング方法を確立した。本研究においてシングルセルクローニングは欠かす事の出来ない操作であるため、今後の研究が円滑に進展することが予想される。そして、iPS細胞株を樹立出来たことにより、細胞分裂スピードが格段に上がり、本研究の加速に繋がることが予想される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
我々が確立した染色体分離法を用いて、DS由来細胞より分取した染色体DNAを増幅し、STR解析を実施した。次にSNP Typingをマイクロアレイにて実施したところ、我々が標的とするSNPが非常に少なく、特に21番染色体短腕側ではひとつも見出せなかった。そこで、Hap Map project関連情報よりアレル特異的なSNPを約90箇所選定した。又、シングルセルクローニングにおいてFISHを使用したスクリーニング方法の確立を実施した。しかし、細胞増殖速度が遅い細胞では、クローニングに長時間費やすため、DS由来繊維芽細胞のiPS化を行い、解析に適したiPS細胞株を樹立したところである。現在、ハプロタイプフェイジングに注力しているところであり、多少の遅延は認められるが、順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
ハプロタイプフェイジングを完了し、標的SNPの確定後、CRISPER/Cas9システムによるアレル特異的全染色体消去にとりかかる。DS由来iPS繊維芽細胞に対し、導入効率の良いウイルスによるCRISPER/Cas9、sgRNA導入を行い、全染色体消去を誘導する切断部位、切断箇所の最適化を試みる。また、複数の組み合わせによる影響も検討する。評価には、シングルセルクローンのFISH及びSTR解析を利用し、クローニング後の転座、逆位、重複を含めた核型判定を行う。また、切断手法のみでなく、他のアレル特異的全染色体消去方法を同時並行で検討する。CRISPER/Cas9システム導入効率の評価、及び導入方法の改善・検討を実施する予定である。最後にRIF1ノックダウンによる切断の高効率化とインターフェロン応答の評価を実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由としては、①当該年度において研究成果発表を行わなかったため その発表のための旅費を使用しなかった。②外部委託受託解析に公的機関を利用し当初の予想より少ない金額で済んだ。③当該年度内に外部委託受託解析を再度依頼する予定であったが、研究計画の改善を図り変更を行ったため依頼しなかった。以上の事に起因すると考えている。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は研究組織を変更し研究分担者を1名追加した(独立行政法人日本学術振興会承認済み)ため、その成果発表を行うための旅費として用いるほか、アレル特異的全染色体消去が行われたことを評価するための外部委託受託解析費用に充当し最大限有効に活用する。
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