研究課題
TRA-1-60(PODXL-1)のがん細胞における特異的遺伝子機能解析および動物モデル実験による機能検証の実施(新潟大・近藤)。PODXL-1を内因性に高度発現している浸潤性膵管がん細胞株3種類を材料に、PODXL1ノックアウト細胞クローンを作成し、wild typeをコントロールにマウス肝転移モデルを作成した。結果、それぞれの膵がん細胞株において、wild typeが多発性肝転移巣を形成したのに対して、ノックアウト細胞移植マウスでは劇的な肝転移巣の消失が認められた。TRA-binding molecule の同定(新潟大・近藤と岡山大・阪口の協働)では、mass- spectrometryを用いてPODXL1結合候補分子を解析した。cortactinを始めとして、複数の新規結合候補分子が得られた(岡山大・阪口)。これらの中から機能的に重要と思われる6個の遺伝子を抽出し、免疫沈降およびがん細胞へのトランスフェクションによる分子間結合可視化技術を用いて検証し、4個の遺伝子が特異的に結合分子であることを同定した。(新潟大・近藤)また、浸潤性膵管癌患者由来の病理組織切片を用いて、PODXL1の組織上における局在の特徴と発現の様式を解析した。結果、病理組織ではPODXL1発現細胞は特に膵がん浸潤の先進部がん小型胞巣に強い発現が認められた。(新潟大・近藤)また、難治性血液悪性腫瘍の代表である濾胞性リンパ腫について、TRA-1-60発現細胞集団を見出し、これらの腫瘍生物学的特性(抗体医薬治療に対する耐性)と現行の治療薬による薬剤群への耐性遺伝子発現の多発的な活性化細胞集団であるなど、臨床治療学的意義を併せた解析論文を作成した。(新潟大近藤:現在投稿中。)
2: おおむね順調に進展している
平成28年度(初年度)計画の目標とした事項は以下の2つである。TRA-1-60(PODXL1)タンパク特異的免疫沈降から超高感度LC-Mass 解析システムを用いた相互反応分子探索へ展開したPODXL1-binding molecule の同定については、浸潤・転移関連の数個の候補分子を得、IPおよびprotein-protein interaction (PPI)を細胞上で可視化できるシステムを併用して4個の新規結合分子を同定できた。また、動物モデル実験によるPODXL1機能検証の実施については、3種類の異なる膵がん細胞株についてそれぞれCRISPER/CAS9でPODXL1ノックアウトクローンを作成し、マウス移植鑑定医モデルを作成し、KO cloneで転移が消失する事実を確認し、PODXL1が膵がんの多臓器転移に必須の分子であることが証明された。以上から、ほぼ計画通りに研究が進行していると判断した。
1.IP-Mass 解析とトランスクリプトーム解析、さらにマウスによるin vivo解析の結果から総合的に相互に有機的に関連づけされる分子群が絞り込まれてくるので、これらの候補分子の実際の患者疾患における反映性・再現性をまず確認する。方法として、多系統(約30種類)の由来の異なるヒト腫瘍組織を搭載したがん組織アレイ、その比較としてのヒト正常系多臓器組織アレイにてTRA-1-60,PODXL, また関連分子を免疫組織化学にて発現解析する。この結果をフィードバックしながら、並行して外科摘出材料から組織型・分化度・原発と転移巣・治療反応性などの因子に注意しつつ膵がん組織、胆管がん組織、胃がん組織などを中心に併せて発現頻度・発現強度と局在を調べていく。研究の進展に沿って、適宜、解析を要する腫瘍系統の病理組織の検索を追加していく。これらの結果をまとめて特に注目する系統のがんにおいて、臨床病理学的因子との相関を解析する。2.TRA(PODXL)変異体の作成と機能解析から、細胞外ドメインあるいは細胞内ドメインの機能制御を可能にするインヒビター創成戦略を立案する(新潟大・近藤と岡山大・阪口の共同討議、実施は新潟大・近藤)。制御用マテリアルとしては実効性を重視し、TRA-1-60 分子においては細胞外ドメイン標的用抗体、われわれが現在構築し保有しているランダムペプチドライブラリー応用技術(Kondo E et al. Nature Commun., 3:951-963, July17, 2012.)による細胞内ドメイン標的用安定化ペプチド創成やScFv(single chain antibody)の作成、あるいはchemical compound を中心にデザイン化、あるいはスクリーニング用ライブラリーの準備法と目的物作成法を考える。
研究継続的遂行に必要とする消耗品と研究試薬の一部の納期が年度末までに完了困難な可能性を予測して、当該品に対する費用確保のため必要経費相当分を繰り越した。
4月初旬に納入完了後、ただちに使用する予定である。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 4件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (6件) (うち招待講演 2件)
生化学
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