研究課題/領域番号 |
16K15246
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
冨本 秀和 三重大学, 医学系研究科, 教授 (80324648)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | マイクロMRI / 脳アミロイド血管症 / 剖検脳 |
研究実績の概要 |
目的;脳葉限局型微小出血(pure lobar MBs)、皮質微小梗塞(CMI)はアミロイド血管症と関連し認知機能低下と強く相関する。我々はCMIの3T MRIによる画像化について報告してきたが、得られた画像情報が真にアミロイド血管症の病理変化を反映しているかは実証されていない。このため、画像病理対応の検索を行う方法論として、剖検脳ブロックをマイクロMRIでex vivo撮像し病理学的検索を行って画像所見の意義をリアルタイムに解明する方法論を確立した。 方法;今回、剖検脳ex vivo MRIでこれら病理学的なアミロイド関連微小血管病変との直接比較を試みた。脳アミロイド血管症、CMI,MBsを認める認知症患者2名のホルマリン固定脳を対象とし,3D-DIR、FLAIR画像を撮影した後、βアミロイド免疫組織化学などを含めて組織化学的に検討した.良質な画像を得るため温度(0、25、47,60℃)の至適条件を検討した。 結果;大脳皮質と白質のコントラストは,0℃、25℃では灰白質と白質の識別は困難であったが、47℃では皮髄境界が明瞭に識別される画像が得られた。60℃ではアーチファクトが増加したため、47℃を至適条件とした。2症例で確認された全ての微小梗塞(皮質2、皮質下1)で画像・病理対応が認められた。CMIの軟膜側では変性した βアミロイド陽性血管が確認され、CMI内部に一致して老人斑の消失を認めた。1症例ではCMIの近傍に脳葉限局型MBsを認め、周囲白質の粗化を伴いヘモジデリン陽性マクロファージが集簇する血管に対応していた。 結論;通常の脳MRIの撮像では温度の影響を考慮する必要はほとんどないが,剖検脳ex vivo MRI 、低温療法下のMRIでは温度が信号強度に影響する可能性がある。今回解明された撮像条件を用いることで、画像・病理対応を検証することが可能である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度の目標として、1.脳を浸漬する液体の種類、温度、剖検脳の前処理法、2.T1、T2強調画像、FLAIR画像の撮像パラメーター(Repetition time, TR; Echo time, TE)を最適化する、という2点を挙げていた。 項目1に関しては、マイクロMRI装置を脳ブロックの至適撮像条件を検討した。撮像はFLAIR画像を中心に行い、脳ブロックの処理、留置条件を変更して画像の解像度を比較した。脳ブロックの留置条件として、純水内、アガロースゲル(2.0g/L)内、空気の3条件を比較したところ、空気では外気との接触部で著しいアーチファクトを生じた。純水内、アガロースゲルでは、このようなアーチファクトを認めなかった。脳ブロックの温度に関しては、0℃、25℃、47℃、60℃の4条件で比較したところ、47℃で最も良好なS/N比が得られた。試料表面が空気の付着などによってアーチファクトを生じる可能性を考慮して、そのままの撮像、脳底の大血管のみ除去、くも膜・皮質血管も除去、といった3条件を比較検討したが、いずれの条件でも大きなS/N比の変化は認められなかった。項目2に関してはT1、T2強調画像、FLAIR画像をTR、TEさまざまな条件で比較し、項目1の至適条件下において、脳ブロックを最も良好に描出可能な撮像条件が明らかになった。以上より、研究計画は概ね項目1、2とも予定通り進行していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度については、28年度の研究結果で明らかとなった撮像条件を用いて、画像病変が反映する病理変化を解明する。脳アミロイド血管症では、凝集性の高いアミロイドβ42は毛細血管に、凝集性の低いアミロイドβ40はそれ以外の小~細動脈に沈着することが知られている。補体の活性化がいずれのサイズの血管に生じるのか、あるいは微小血管病変の成因に直接関与するのか、についてアミロイドβと補体の蛍光二重標識法を行って検討する。 方法として、ex vivo MRI撮影の後に脳ブロックを脱水してパラフィン包埋する。ミクロトームでROIを含む深さまでの連続切片(6μm厚)を作成する。ヘマトキシリン・エオジン(HE)染色、鍍銀染色、髄鞘染色を含めた標準的な組織染色を行って画像病変近傍の病理変化を同定する。さらに、隣接切片はチオフラビン染色、抗アミロイドβ40, 42抗体、抗CD31抗体、GFAP抗体、抗CD68抗体などを一次抗体とする免疫染色を行い、画像病巣に生じている病理変化の分子機構を明らかにする。必要に応じて、100ミクロン厚の厚切り切片を作成して、共焦点レーザー顕微鏡を用いて微小血管病変とアミロイド血管の3次元的関連を明らかにすることで、脳アミロイド血管症が微小病変を生じる機序に迫ることも検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該研究において、計画はおおむね順調に進んだが、一部、剖検脳のEx vivo MRI撮影においては、施設内の共通機器の調整により撮影にやや遅れが生じたため、それにかかる施設利用費用や、蛍光色素等の抗体は直前に購入することとし、繰り越しとした。
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次年度使用額の使用計画 |
Ex vivo MRI撮影にかかる費用や、蛍光色素などの抗体や薬品などを購入予定である。
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