研究課題
平成30年度はマイクロMRIを応用して脳アミロイド血管症(cerebral amyloid angiopathy;CAA) の画像診断マーカー、coritcal superficial siderosis (cSS)について検討した。cSSは放射学的に定義されているが、その病理変化について記載した報告は現在までなく、画像と病理の対応関係を検討して、cSSの発症に至る分子機構を解明することを目的として行った。CAA21例の剖検脳の鉄染色で、脳溝に沿った脳表の粗大な陽性反応を示す症例が4例(cSS陽性群)、脳表の粗大な鉄沈着を欠き皮質浅層への鉄染色陽性細胞の浸潤のみを認める症例(cSS偽陽性群)が4例であった。以上の8例のほかは大脳皮質に陽性反応を認めなかった(cSS陰性群)。cSS陽性群4例中2例でマイクロMRIを撮像し、T2*強調画像でいずれも脳溝に沿った低信号を認めた。剖検ブロックの大脳皮質をパラフィン切片とし、炎症関連分子としての補体、macrophage scavenger receptor (MSR)、apo Eの分布を検討した。cSS4症例の軟膜血管はApo E、補体、MSR免疫反応要請であった。cSS直下の皮質ではMSR陽性の活性化ミクログリア・マクロファージが皮質第1層を中心に集簇しており、その一部はAβ陽性であった。cSS陽性群4例中2例で軟膜血管のC5b-9陽性であった。以上の結果から、①放射線学的に定義されるcSSは大脳皮質表面の鉄沈着に対応し、陳旧性の脳表出血と考えられること、②鉄染色陽性例では大脳皮質浅層に鉄染色陽性の細胞浸潤を認めること、③cSS部位の血管には炎症関連分子が発現し、一部はC5b-9陽性であることから細胞膜障害性が示唆された。従って、cSSの影響は脳実質内に及ぶこと、Aβ沈着部位では血管炎症を随伴して破綻に至る機序が示唆された。
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