研究課題/領域番号 |
16K15247
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
安井 弥 広島大学, 医歯薬保健学研究院(医), 教授 (40191118)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 分泌型T-UCR / 非翻訳RNA / 消化管癌 / 泌尿器癌 / リキッドバイオプシー |
研究実績の概要 |
超保存領域 (transcribed-ultraconserved regions: T-UCRs)から転写される非翻訳RNA (ncRNA)がExosome内にも存在することが示唆されており、本年度はリキッドバイオプシーへの応用と治療への展開を目的として以下のとおり研究を実施した。 1)前立腺癌の癌組織および癌細胞において特異的高発現するT-UCR-の同定と機能解析:代表的な26種のT-UCRについて、前立腺癌組織と非癌部前立腺を材料に定量的RT-PCRによって発現を解析し、Uc.3+、Uc.4+、Uc.63+が高発現することを見いだした。特にUc.63+は正常14臓器では低レベルであった。前立腺癌におけるUc.63+の発現は、高グリソンスコアおよびPSA値と有意に相関していた。前立腺癌細胞株PNCaPとDU145を用いた生物学的解析で、Uc.63+は細胞増殖ならびに細胞運動を制御することが分かった。Uc.63+の発現はmiR-130bによって制御され、MMP2が下流の重要な標的であることを示した。 2)前立腺癌患者血清中Exosome内のT-UCRの測定と治療感受性との関係:前立腺癌細胞株を用いた検討で、Uc.163+はAndrogen receptorとPSAの発現を制御し、docetaxel抵抗性を惹起することを見いだした。さらに、droplet digital PCRによって血清中のUc.63+が測定可能であり、特に、転移を有する症例、去勢抵抗性の症例(CRPC)、docetaxel抵抗性の症例で有意に高値であった。転移を有するCRPCでは、Uc.163+高値例が有意に予後不良であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の計画通り、前立腺癌組織および前立腺癌細胞株(LNCAP、DU145、PC3)を用いて、癌特異的に高発現するT-UCRとしてUc.60+を同定した。さらに、droplet digital PCRによって血清中のT-UCRが測定可能であることが分かった。特徴的に高発現を示すT-UCRについて、発現抑制あるいは強制発現により、癌細胞株を用いたMTTアッセイやwound healingアッセイを行なった。治療感受性・抵抗性に関しては、去勢抵抗性およびdocetaxel感受性との関連を癌細胞株を用いて解析し、さらに、臨床例においてもT-UCR血清値と治療感受性、予後との相関を検討した。結果は、研究実績の概要に示した通りである。 一方、胃癌においても解析を開始しており、いつかの癌で特徴的な発現を示すT-UCRを見いだしている。
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今後の研究の推進方策 |
すでに提出済みの研究実施計画に従って実験を推進する予定である。前立腺癌、胃癌で同定されたT-UCRに関しては、消化管癌(食道癌・胃癌・大腸癌)では血清サンプル、泌尿器癌(膀胱癌、前立腺癌、腎癌)では血清サンプルと尿サンプルを用いてdroplet digital PCR によってT-UCR値を測定する。また、組織サンプルが入手可能な検体については同様の測定を行い、組織中と体液中のT-UCRレベルの相関を検討する。 体液中T-UCR測定値と臨床病理学的事項・治療情報との関連解析では、特に、早期診断の可能性、抗癌剤治療反応性、予後との関連に注目する。上記の解析は、技術的、設備的には問題なく遂行することができる
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