研究課題/領域番号 |
16K15248
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
竹屋 元裕 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 理事 (90155052)
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研究分担者 |
Horlad Hasita 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 研究員 (00644840)
大西 紘二 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 助教 (40613378)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | リンパ洞マクロファージ / CD169 / 抗腫瘍免疫 / バイオマーカー / CCL8 / CXCL10 / 乳癌 / 大腸癌 |
研究実績の概要 |
リンパ節の洞マクロファージは、リンパ管を通して流入した腫瘍抗原を認識して抗原特異的なリンパ球活性化を誘導し、抗腫瘍免疫の成立に関わっている。CD169(Sialoadhesin, Siglec 1)はシアル酸含有分子との結合能をもつ膜蛋白で、生体内では主にリンパ節洞マクロファージに発現がみられる。ところが、担癌患者の所属リンパ節洞マクロファージにおけるCD169の発現強度は症例によって様々であった。そこで、大腸癌およびメラノーマ症例を検討すると、所属リンパ節のCD169陽性洞マクロファージが多い症例ではCD8陽性Tリンパ球の腫瘍内浸潤が増加し、術後生存率が高いことが明らかとなり、CD169陽性洞マクロファージが抗腫瘍免疫に重要な役割を果たしている可能性が指摘された。平成28年度の検討では、乳癌症例について同様の解析を行ったが、リンパ節転移がない乳癌症例群において所属リンパ節のCD169陽性洞マクロファージの数と割合が、転移症例群に比して有意に高く、所属リンパ節のCD169陽性マクロファージ数がリンパ節転移の評価に有用である事が示唆された。更に、CD169陽性マクロファージが特異的に産生する分子を同定できれば、リンパ節での微小環境や抗腫瘍免疫能を反映する新規マーカーとして利用可能と考え、IFNα刺激後に特異的に発現する分子について、DNAマイクロアレイを用いて網羅的に検索した。その結果、CCL8とCXCL10の発現が確認された。そこで、ヒト大腸癌のリンパ節を用いて免疫染色を行うと、CD169陽性マクロファージに一致してCCL8とCXCL10の陽性像が確認された。次に、大腸癌48例を対象として解析したところ、リンパ節洞マクロファージのCD169陽性率が高い群でCCL8の血中濃度が高い傾向がみられ、CCL8が抗腫瘍免疫能を反映する分子マーカーとなり得る可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
癌の免疫療法においては、患者個人の免疫能を的確に評価する免疫モニタリングが重要である。リンパ節の洞マクロファージは、リンパ管を通して流入した腫瘍抗原を認識して抗原特異的なリンパ球活性化を誘導し、抗腫瘍免疫の成立に関わっているが、癌患者におけるリンパ洞マクロファージの重要性はこれまで殆ど注目されておらず、抗腫瘍免疫能を反映する分子マーカーも不明のままであった。この様な観点から、本計画では、リンパ節のCD169陽性洞マクロファージに注目し検討を加えた。これまでの検索で、大腸癌やメラノーマ症例において、所属リンパ節のCD169陽性マクロファージが多い症例ほど、術後の生存率が良好であることを確認したが、平成28年度の検討では、乳癌症例においても同様の傾向がみられ、さらにリンパ節転移のない症例で、リンパ節転移症例に比してCD169陽性マクロファージ数が多いことを明らかにした。このことは、CD169陽性洞マクロファージが抗腫瘍免疫に重要な役割を果たしている可能性を示唆している。加えて、癌患者の免疫モニタリングに活用するため、CD169陽性マクロファージ由来の生理活性分子のうち、血中で測定可能な分子の同定を目指し検討を行った結果、大腸癌症例ではリンパ節洞マクロファージのCD169陽性率が高い群で、CCL8の血中濃度が高い傾向がみられ、免疫モニタリングの候補分子となりうることが示唆された。以上の結果から、計画は概ね順調に進んでいると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
CD169はIFNαなどのI型IFNで活性化した場合にのみ、マクロファージに高発現する。平成28年度の検討では、CD169陽性マクロファージから産生される分子としてCCL8とCXCL10を同定したが、次年度は、CD169陽性マクロファージを癌細胞培養上清で刺激するなどの処理を加え、新しい候補分子を検索する。また、CCL8、CXCL10および新規の候補分子について、ヒト大腸癌症例における血中濃度を検討するとともに、大腸癌以外の症例についても血中濃度を検討し、免疫モニタリングのための分子マーカーとしての有用性を検討する。さらに、候補分子によるリンパ球活性化能についても検討を加える。
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