研究課題
口腔組織は外界に接し絶えず物理的刺激や病原体の侵入に晒された組織であり、その恒常性の破綻は、口腔局所においては免疫系の過剰な活性化を介して炎症性骨破壊を引き起こすことが知られている。申請者らは関節炎において免疫系が骨破壊をひきおこすメカニズムの解明に精力的に取り組んでおり、最近関節炎誘導性の新規Th17細胞サブセットの同定に成功した。さらに申請者らは細胞系譜特異的RANKL欠損マウスを新たに創出し、滑膜線維芽細胞が破骨細胞誘導性細胞であることを初めて見出した。これらの研究により申請者らは新規T-滑膜線維芽細胞の相互作用が関節炎における炎症性骨破壊の機軸となることを世界で初めて明らかにした。近年、関節リウマチ患者では腸内細菌だけでなく口腔内細菌の恒常性も破綻していることが報告されている(Zhang et al. Nature Medicine 2015)。また、口腔内恒常性の破綻は糖尿病や心筋梗塞など他臓器疾患との間に疾病相関性も報告されているが、その分子基盤の多くは不明である。本年度では口腔内恒常性の破綻時における新規Th17細胞を含めた免疫細胞の解析を行った。また、新規Th17細胞の病原性を司る分子基盤を明らかにするためトランスクリプトームおよびプロテオーム解析とともに治療標的分子のスクリーニングを行い複数の候補遺伝子を選定した。さらに、CRISPR-Cas9システムを用いて候補遺伝子をターゲットとした遺伝子欠損マウスを複数樹立することに成功した。
2: おおむね順調に進展している
現在まで、概ね当初の計画通り研究が進行しているため。
前年度に引き続いて新規Th17細胞の病原性の理解と口腔内環境の恒常性の破綻のメカニズム解明、および自己免疫疾患の病態関連に関する検討を重ねていく予定である。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (14件) (うち国際学会 4件、 招待講演 4件) 図書 (3件)
Journal of Bone and Mineral Research
巻: 32 ページ: 434-439
10.1002/jbmr.2990
Physiological Reviews
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