研究課題/領域番号 |
16K15258
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
松川 昭博 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 教授 (90264283)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ウイルス感染 / MAPKシグナル伝達 / シグナル伝達抑制 |
研究実績の概要 |
1)Spred-2過剰発現ベクター作成とH1N1/PR8感染実験 His-TagをつけたSpred-2発現ベクターを作成した。これを肺胞上皮細胞に導入し、Spred-2を過剰発現させた。Spred-2の過剰発現は、mRNAの上昇に加え、抗His-Tag抗体によるタンパク発現で確認した。また、新規にポリクローナル抗Spred-2抗体を作製した。抗体の特異性確認は、Spred-2過剰発現時に抗His-Tag抗体と同じ位置にバンドに検出できることで確認した。同抗体は免疫染色にも有効であった。肺胞上皮細胞やマクロファージにH1N1/RP8を感染させるとERK-MAPKの活性化が誘導されるが、Spred-2遺伝子導入により、ERK-MAPKの活性化は抑制された。このとき、感染細胞からのウイルスタンパクは有意に減少したことから、Spred-2導入により、ウイルス感染が抑制できることを明らかにできた。次に、Spred-2導入遺伝子に修飾を加え、核内に留まるタイプ、核外に排出されるタイプを作製した。いずれもSpred-2の高発現を確認できたが、核内に留まるタイプでもっとも強い細胞遊走能抑制効果を発揮した。また、この機能をつかさどるタンパク活性部位を調べるため、異なるサイズのSpred-2発現ベクターを作製して活性部位候補の同定を行った。 2)Spred-2過剰発現によるインフルエンザ感染抑制(平成29年計画前倒し) 遺伝子改変マウスの作出に成功し、Spred-2過剰発現マウスの繁殖を開始した。過剰発現マウスのマクロファージにおいて、刺激によりSpred-2過剰発現マウスで有意な発現量の増加を確認できた。現在、マウスより気道上皮細胞の単離に取り組んでいる。また、野生型およびSpred-2過剰発現マウスにH1N1/PR8の感染実験を実施準備中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Spred-2発現ベクターを種々作成し、これらを細胞に導入してSpred-2を過剰発現させる検討は予定を上回って確実に進行している。平成29年度計画であるSpred-2過剰発現マウスの作出も前倒しで実施しており、すでに研究に必要な過剰発現マウスの作成が完了した。Spred-2発現量をタンパクレベルで検討するための良い抗体がないため、合成ペプチドでウサギを免疫し、マウス、ヒトSpred-2に交差反応を示す抗Spred-2抗体を作成した。このように、本研究課題を遂行するために必要な研究基盤は予定を上回って確実に進行している。また、肺胞上皮細胞やマクロファージ細胞にSpred-2を過剰発現した細胞にH1N1/PR8を感染させ、ERK-MAPK系の低下とウイルス感染の減少を見出している。Spred-2過剰発現マウスより細胞を単離して行うウイルス感染実験(申請時平成29年度計画)にも着手している。一方、過剰発現細胞をマウスに投与してH1N1/PR8を感染させるin vivo実験は遅れているが、次年度に成果を出せるよう、現在実験を開始したところである。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の結果を踏まえ、さらにin vitro での研究を進める。Spred-2高発現肺胞上皮細胞、肺胞マクロファージをマウス気道内に投与し、同マウスにH1N1/PR8を経鼻感染させる実験は遅れており、次年度は、当初計画に加えて、本実験にも注力する。また、平成30年度計画のcell penetrating peptide (CPP)を付加した、機能性Spred-2ペプチド作製を見据えた検討を開始する。
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