研究課題/領域番号 |
16K15260
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研究機関 | 京都府立医科大学 |
研究代表者 |
五條 理志 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (90316745)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | リプログラミング / non-coding RNA / iPS細胞 |
研究実績の概要 |
本年度は当初の予定通り、TIG-1細胞内にRNY1結合タンパク質であるRO60タンパク質が存在していること、このRO60タンパク質に大量のRNY1が含有していることが確認できた。これらの評価にはウェスタンブロッティング法と免疫沈降法、定量RT-PCRを用いている。またRNY1の細胞質内の量は山中因子(OCT4、SOX2、KLF4、c-MYC)によって増加することも明らかとなった。次にRO60抗体にて免疫沈降したタンパク質をLC-MS/MSにて解析したところ、複数のタンパク質が存在していた。この中でも細胞質に多く存在することが報告されており、これまでRO60タンパク質との相互作用が報告されていないタンパク質の存在を同定した(FactorXとする)。 FactorXはP-body関連タンパク質として知られており、細胞内のRNA代謝で重要な役割を果たしている。そこでTIG-1細胞内のFactorXの挙動について評価することにした。TIG-1細胞の細胞質タンパク質液を用いて、FactorXとRO60タンパク質をそれぞれ免疫沈降し、それぞれの抗体でウェスタンブロッティングしたところ、互いにバンドが検出された。このことは細胞内でRO60はRNY1とFactorXが結合している可能性を示唆している。さらにFactorXはリプログラミング中のOCT4陽性細胞に多く局在していることを明らかにした。このことからもFactorXはリプログラミングにおいて重要な役割を担っている可能性が高い。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
RNY1の挙動と局在、結合するタンパク質とさらに結合するタンパク質を同定できている。また解析中のFactorXは既に抗体が存在しているため、評価もしやすい。さらに分化誘導系、RNA・タンパク質回収と評価法、免疫沈降法等の手法も我々は有しているため、結果もコンスタントに出しやすい環境である。また一回の実験にかかる日数が5日以内で評価できる系が多いため、結果の解析と検討が同時並行に行える。以上の理由から本研究は順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究計画は予定通り進行している。今後も予定通り、特定したFactorXがiPSリプログラミングと関連するのかを調べる。そこでTIG-1細胞をCRISPRシステムにてFactorX、RO60遺伝子のそれぞれを破壊したラインを樹立する。これらのラインの細胞増殖に問題がないことを確認しつつ、山中因子によるリプログラミングをかけ、iPSコロニー数のカウントにて評価を試みる。CRISPRにはlentiCRISPRv2システムを利用する。FactorXはsiRNAにてノックダウンするとP-bodyが形成されないという報告もあるため、CRISPRシステムによるFactorX遺伝子破砕を観察することでリプログラミングに与える影響を評価できる。またFactorXとRNY1、RO60の三者関係がどのようになっているのかをsiRNY1を用いた細胞にて免疫沈降法や免疫染色法にて評価したい。これによりRNY1が各タンパク質に与える局在の変化や結合量について比較することができる。これらの結果は論文として報告し、更なる研究の足固めとしていきたい。
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