目的:マラリアは、毎年2億人余りが罹患し約60万人が死に至る感染症であるが、ここ数年来マラリアによる死亡者数は減少傾向に転じ、マラリアエリミネーションが視野に入ってきた。そのためには、熱帯熱マラリアのみならず、患者数がそれと同等の三日熱マラリア対策も必須となっている。しかし、三日熱マラリアは肝内休眠型による再発をおこすことが知られており、その対策は困難を極めている。三日熱マラリア原虫は網状赤血球のみに侵入することから、網状赤血球結合タンパク質(Reticulocyte-binding protein、以下RBP)が同定され、さらにRBPは9種類の遺伝子からなるファミリーであることが判明した。しかし赤血球側レセプターの同定等の研究は全く進んでいない。さらに、インビトロ培養法が確立されていないため研究が非常に遅れている三日熱マラリア原虫の感染分子機構の理解を深めるため、赤血球侵入に必須のRBPをモデルとして赤血球側のRBPレセプター分子の同定を目的に本研究を実施した。 平成29年度の研究成果:平成28年度に9種類全てのRBPを組換えタンパク質として合成した。平成29年度は、既に合成完了しているヒト2万種類のプロテインアレイの中から赤血球タンパク質218種を選択し、平成28年度に合成に成功した9種類のRBPとのタンパク質-タンパク質相互作用をAlphaScreen法で探索した。その結果、複数のRBPに対する新規赤血球レセプター分子の同定に成功した。この成果は、コムギ無細胞タンパク質合成法で作製した組換えタンパク質ライブラリの有用性を示すものである。
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