研究課題/領域番号 |
16K15267
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研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
菊地 泰生 宮崎大学, 医学部, 准教授 (20353659)
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研究分担者 |
丸山 治彦 宮崎大学, 医学部, 教授 (90229625)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 寄生虫 / バクテリア / マイクロバイオーム |
研究実績の概要 |
腸管寄生虫は腸内バクテリア叢と深い関係を持ってその感染環を成立させていると考えられるが、寄生虫とバクテリアの相互作用はこれまでほとんど明らかになっていない。本研究では寄生虫感染におけるバクテリアの役割を理解するため、研究室内実験およびフィールド調査によって寄生虫―バクテリアの相互関係を明らかにする。実験材料には2種のラット腸管寄生線虫を用い、フィールド調査は次世代型寄生虫検出法を開発して大規模に行うことで、両者の相互作用の深い理解を目指す。得られた成果は「バクテリアによる寄生虫制御手法の開発」に活用する。 本研究では、以下のことを研究期間内に実施する。・ホスト体内での相互作用を、腸管寄生線虫接種によるラット腸内のバクテリア叢の変動解析により明らかにする。 ・ホスト体外における相互作用を、排出線虫卵の発達とバクテリアとの関係から明らかにする。 ・野生ラットにおける寄生虫叢とバクテリア叢を調査し、2者の相関関係を明らかにする。 ・以上の結果から、「寄生虫感染におけるバクテリアの役割」を総合的に考察し、寄生虫の各発達ステージでキーとなるバクテリアを絞り込み、実験的に検証を行う。 マウスと腸管寄生線虫Strongyloides rattiとStrongyloides venezuelensisを腸管寄生虫感染モデルとして用い、接種前、接種後の糞便を系時的に回収し、DNA抽出後16SrDNAに基づくメタゲノム解析を行った。解析には宮崎大学で保有する次世代シーケンサーIllumina Miseqを使用し、データ解析はQiimeソフトを用いた。その結果、Strongyloides veneuelensisの感染時にいくつかの細菌群の集団比率が特異的に増大してくることを見出すことができた。この増大はStrongyloides veneuelensisの感染レベルの低下にしたがって減少し、感染前の状態に回復した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マウスと腸管寄生線虫Strongyloides venezuelensisを用いて、ホストー寄生虫ーバクテリア間の相互作用を解析するモデルを構築できている。今後解析を進めることで、3者のインタラクションの理解を進めることができると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
①寄生虫感染による腸内バクテリア叢変動解析(前年度からの続き) 昨年度に引き続き、寄生虫感染時の腸内バクテリア叢の変動および体外での卵発生へのバクテリア関与について解析を行い、ホスト体内および体外における寄生虫―バクテリア相互作用を明らかにする。 ②次世代型寄生虫検出法の開発 フィールドにおける寄生虫多様性調査のために、新しい寄生虫検出法を開発する。具体的には近年我々が提案した次世代シーケンサーを用いる検出法を改良する。改良は寄生虫重点化データベースの構築と、検出領域の検討によって行う。寄生虫重点化データベースは18SリボソームRNA遺伝子(18SrDNA)を使用し、公共シーケンスデータベースと文献を活用して構築する。データが不十分もしくは不明確な分類群については、新たにシーケンスデータを取得する。検出領域の検討はin silicoおよび実験的シュミレーションにより行う。18SrDNAから、寄生虫検出・同定に適した部位をシュミレーションにより選抜する。選抜した領域について実験的に堅牢性、分解能を検討する。具体的にはPCR増幅が容易で、かつ寄生虫の分類を高解像度で行える領域を増幅するプライマーセットが必要である。
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次年度使用額が生じた理由 |
1月に予定していた次世代シーケンシング解析が、3ヶ月ほど遅れたため、試薬の消費期限を考慮して今年度に購入するのが得策であると判断したため。
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次年度使用額の使用計画 |
次世代シーケンシングサンプルが準備できしだい、試薬を購入し次世代シーケンシング解析を行う。
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