研究課題
病原真菌カンジダ菌(C. albicans)は、ヒトの皮膚や粘膜に常在しているが、健常人に対しては顕性感染を起こさない。一方で、日和見感染の原因菌として、高齢者、がん患者、免疫不全患者にとって時には命を脅かす感染症を引き起こすことが知られている。申請者らは、その感染防御にインターロイキン17A(IL-17A)が非常に重要な役割を果たすことを明らかにしてきた。IL-17Aを産生する細胞は、免疫担当細胞の中でも限られた細胞群に限局されているが、それらの細胞でも恒常的には分泌されず、何らかの刺激が必要である。そこで本研究では、1)IL-17A産生細胞の同定、2)IL-17A産生の分子機構の解明を行うことを目的とした。平成28年度は、まず、マウス皮膚でのカンジダ感染系の確立、およびカンジダ菌感染後のマウス皮膚から免疫担当細胞とその他の細胞を単離し、フローサイトメーターで解析する方法の確立した。マウス皮膚では、感染後2日後にサイトカイン産生が誘導され、感染後7日でカンジダ菌が皮膚から排除されることがわかった。この時、IL-17A/F欠損マウスでは、感染7日後でもカンジダ菌は排除されず、IL-17A、あるいはIL-17Fが感染防御には必須であることがわかった。次にIL-17Aの発現に伴い蛍光タンパク質のEGFPを発現するレポーターマウス(IL-17EGFPマウス)の皮膚にカンジダ菌を感染させ、皮膚でのIL-17Aの産生細胞の同定を試みた。その結果、これまでIL-17A産生細胞として知られる、CD4陽性T細胞のTh17細胞からはほとんどIL-17Aは分泌されていないことがわかった。今後は、このIL-17A産生細胞を詳細に検討する予定である。
2: おおむね順調に進展している
今年度は、マウス皮膚でのカンジダ感染系の確立、およびカンジダ菌感染後のマウス皮膚から免疫担当細胞とその他の細胞を単離し、フローサイトメーターで解析する方法を確立するなど、新たな実験系を確立することに成功した。さらに、レポーターマウスを用いることで、特定のタンパク質産生細胞を同定する方法が確立できた。さらに当初の目的通り、これまで知られていなかった細胞から特定のタンパク質が分泌されることをみいだした。これらのことから、実験計画は概ね順調に進展していると考える。
今年度は、真菌感染に応じて分泌されるIL-17Aの産生細胞が、これまで知られていた細胞とは異なる細胞から分泌されることをみいだした。今後は、その細胞を詳細に解析し、細胞の同定とIL-17Aの産生機構を解析する予定である。
すべて 2017 2016 その他
すべて 雑誌論文 (7件) (うち国際共著 3件、 査読あり 7件、 オープンアクセス 4件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 2件) 備考 (1件)
J Immunol.
巻: 198 ページ: 61-70
10.4049/jimmunol.1502393
Inflamm Res.
巻: 65 ページ: 235-244
10.1007/s00011-015-0910-1.
BMC Immunol.
巻: 17 ページ: 1
10.1186/s12865-015-0139-3.
Innate Immun.
巻: 22 ページ: 316-324
10.1177/1753425916645392.
巻: 197 ページ: 278-287
10.4049/jimmunol.1502485.
J Biol Chem.
巻: 291 ページ: 17629-17638
10.1074/jbc.M116.741256.
Proc Natl Acad Sci U S A.
巻: 113 ページ: 14097-14102
10.1073/pnas.1617903113
http://cytokine.pf.chiba-u.jp/