研究課題
これまでの多くの疫学研究から、CagA陽性ピロリ菌感染と心血管病変発症との間に正の相関の存在が明らかにされている。また、CagAを発現する胃上皮細胞からCagA含有エクソソームが放出されることが示され、ピロリ菌感染患者の血中にはCagA陽含有エクソソームが検出される。そこで本研究ではCagAが血管内皮細胞に及ぼす影響を検討するため、血管内皮細胞特異的にピロリ菌CagAを発現するマウスの樹立を試みた。まず、電気穿孔法を用いて野生型CagA発現ベクターならびにチロシンリン酸化耐性型CagA (CagA-PR) 発現ベクターをヒト臍帯静脈由来血管内皮細胞 (HUVEC) に導入し、CagAが血管内皮細胞に対して病原生物活性を示すか否かを検討した。結果、胃上皮細胞にてチロシンリン酸化依存的にCagAが誘導するEMT様細胞変化と同様の形態変化が血管内皮細胞においても誘導され、血管内皮細胞でのCagAの病原生物活性を示すことに成功した。並行して、Creリコンビナーゼ依存的にcagA遺伝子遺伝子発現ユニットをRosa26座に挿入したノックインマウス(R26LSL-CagAマウス) と血管内皮細胞選択的にCreリコンビナーゼを発現するCdh5遺伝子プロモーター/Creトランスジェニックマウス (Cdh5-Creマウス) を交配し、仔マウスを得た。仔マウスの尾端片からゲノム DNAを精製し、cagA遺伝子およびCre遺伝子断片を特異的に増幅するプライマーセットを用いてPCRを行うことで仔マウスの遺伝子型を判定した。その結果、血管内皮細胞特異的にCagAを発現することが期待されるR26LSL-cagA;Cdh5-Creコンパウンドマウスが得られた。現在、樹立した血管内皮細胞特異的にピロリ菌CagAを発現するコンパウンドマウスにおける血管病変の進展を観察中である。
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