本研究では、ウイルスRNAセンサーであるRIG-I-like receptor (RLR)が、宿主の内在性RNAを認識し、生理的な機能を発揮する可能性について明らかにし、新しい抗ウイウルス自然免疫制御機構の可能性を提示することを目的とする。 平成29年度は、前年度に引き続きRLRの一つであるRIG-Iの基質となる得るRNA構造を持つ内在性RNAに着目し、それらがRIG-Iによって認識してされ抗ウイルス自然免疫シグナルを活性化し得るか否かについて解析を行なった。28年度の解析から、5’末端に三リン酸構造をもつRNAが内在性に発現していること、またそれがRIG-Iと細胞内で会合することを明らかにしてきたことから、今年度はこれらのRNAの抗ウイルスシグナルへの関与を検討した。その結果、このRNAを細胞内に高発現させた場合、RIG-Iを介したI型インターフェロン(IFN)発現へ至る抗ウイルスシグナルが誘導されることが明らかになった。しかし、これらの内在性RNAは定常状態では複数のRNA結合タンパク質(RBP)と会合し、RIG-Iには認識されない制御がなされていることが予想された。そこで、このRNAに会合していることが報告されている複数のRBPの発現を抑制した場合のIFN誘導シグナルへの影響を検討したところ、特定のRBPの発現抑制がIFN産生を増強することが明らかになった。従って、定常状態ではこの内在性RNAはRIG-Iに認識されないよう保護されているものの、何らかの刺激あるいはタンパク質量の増減などのストレスに応答し、内在性RNAによって抗ウイルスシグナルが誘導される状況があり得ることが明らかになった。この制御機構をさらに詳細に検討することにより、内在性RNAによる抗ウイルス応答の制御およびIFN系が関与する疾患との関係などについて新しい研究領域の展開が期待された。
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