研究課題/領域番号 |
16K15282
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
上田 啓次 大阪大学, 医学系研究科, 教授 (00221797)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | HBV感染受容体 / NTCP / coreceptor / 抵抗(制限)因子 |
研究実績の概要 |
B型肝炎ウイルス(HBV)は極めて種特異性が高く、哺乳類ヘパドナウイルス(orthohepadnavirus)にヒトを含めた類人猿との相互感染は成立しない。HBV感染には極めて高度に分化した正常肝実質細胞を要し、脱分化していると思われるヒト肝癌由来培養細胞株には感染しない。HBVの生活環の解明には、より簡便なin vitro感染系の構築は勿論だが、HBVの個体内侵入機構、病態発生機構の解明とそれに基づいた治療薬・治療法の開発にはマウスのような小動物を用いた個体レベルでの感染系の構築が不可欠である。NTCP(Na-taurocholate co-transporting peptide)がHBVの感染受容体として同定され、このような困難な研究状況は一気に解決されたかと思われた。が、ヒトNTCPをマウス肝細胞由来(αMLやBNLなど正常肝細胞に近いとされる)細胞株で発現させてもHBV感染が許容されないことを見出した。NTCP以外のヒト型肝細胞因子の存在やマウス肝細胞における抵抗/規制因子(HBVコア蛋白に対する抵抗/規制性因子を含む)の存在が示唆される。本研究ではこれらの因子を見出し、発現、ノックアウト、ノックダウンなどを施し、個体レベルでのHBV感染系の構築を目指している。 現在、1)ヒト肝癌由来培養細胞株(HepG2)及びマウス肝細胞株(αML)を用いてHAタグ付きHBVコアタンパク(HA-HBc)発現細胞株(HA-HBc/G2、HA-HBc/αML)を樹立し、比較しながら、HBcと相互作用する細胞因子を免疫沈降で分離・同定する。2)NTCP・V5・His6を発現するHepG2細胞(NTCP・V5His/G2)からNTCP相互作用因子(co-receptor)の分離・同定する、の2項目に関して、進めている。 HBc発現細胞の樹立にやや時間を要しているが、確実に進捗している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
1)HBVコア蛋白(HBc)と相互作用する宿主因子の分離・同定とそのHBV感染における機能の解析.(研究代表者;上田啓次) ヒト肝癌由来培養細胞株(HepG2)及びマウス肝細胞株(αML)を用いてHAタグ付きHBVコア蛋白(HA-HBc)発現細胞株(HA-HBc/G2、HA-HBc/αML)を樹立中である。HA-HBcの発現をIFAで確認後、ウェスタンブロットで確認しているが、IFAで確認される発現がウェスタンブロット法で検出されていない等の問題点を解決する必要がある。 2)NTCPと相互作用する宿主因子(co-receptor候補)の分離とその機能解析.(研究協力者;大学院生 Yadarat Suwanmanee) NTCP・V5His/G2(作製済)を用いて、抗V5抗体アガロース若しくはNi-NTAアガロースを用いたpull-down法により、NTCP複合体を分離した。これまでに、ある宿主因子がHBV感染に必須であることを突き止めているが、その因子がNTCPと複合体を形成していることを見いだしつつある。また、抗V5抗体アガロース若しくはNi-NTAアガロースを用いたpull-down法により、NTCP複合体の全容を解明中である。
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今後の研究の推進方策 |
1)HBVコア蛋白(HBc)と相互作用する宿主因子の分離・同定とそのHBV感染における機能の解析.2)NTCPと相互作用する宿主因子(co-receptor候補)の分離とその機能解析.3)マウスshRNAライブラリーを用いたNTCP/αMLにおけるHBV感染スクリーニングとその責任因子の同定及び機能解析.の3項目について、進捗させる。 1)の目標達成がやや遅れているものの、発現コンストラクトに問題はなく、現在も樹立に向けたスクリーニングを続け、早晩樹立が期待できる。本細胞が樹立されれば、4)HBVコアタンパクと相互作用する宿主因子の分離・同定とそのHBV感染における機能の解析.を開始する。 2)に関しては、すでに幾つかの因子(これまで申請者が発見した因子を含む)を同定しており、今後、全長cDNAのクローニング、ノックダウン、ノックアウトにより、その機能的意義(マウス肝細胞がHBV感染抵抗性を示す理由)について解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験の遂行は、研究室に残存していた物品を使用することで賄うことができたため、新たに購入せずに行った。
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次年度使用額の使用計画 |
研究室に残存していた物品はほぼ使用済となったので、今後は本経費を消費して、研究を進めることになる。
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