研究課題/領域番号 |
16K15286
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
名川 文清 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 講師 (10241233)
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研究分担者 |
大島 健志朗 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 特任准教授 (40537411)
高橋 宜聖 国立感染症研究所, 免疫部, 室長 (60311403)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 獲得免疫系 / 進化 / 無顎類 / VLR / 遺伝子再編成 |
研究実績の概要 |
獲得免疫系は、脊椎動物が持つ高度な生体防御システムであり、ゲノム再編成により多様化される抗原受容体が重要な役割を果たしている。軟骨魚類からヒトに至るまでの生物は、イムノグロブリン(Ig)型の抗原受容体の遺伝子を、DNAトランスポゾン由来であるV(D)J 組み換えにより再編成し、多様な抗原受容体を創り出している。一方、軟骨魚類より下等なヤツメウナギやヌタウナギなどの無顎類では、leucine rich repeat(LRR)からなる抗原受容体VLRの遺伝子を、V(D)J 組み換えとは異なるゲノム再編成システムによって多様化している。本研究課題では、VLR遺伝子の再編成がトランスポジションの反応を利用している可能性を検討している。まず、ヌタウナギのVLRCおよびVLRAの遺伝子再編成を解析する過程で、LRRセグメントの挿入に伴い、定常領域の配列が重複した部分再編成体を多数見いだした。これらの部分再編成体では、挿入されたLRRセグメントの両端に重複配列が存在しており、まさにLRRセグメントがターゲットサイトにトランスポーズした構造になっていた。一方ヌタウナギのVLRB遺伝子再編成では、このような定常領域の配列が重複した部分再編成体は得られなかった。この理由については現時点では不明である。また、ヤツメウナギに関しては、1次リンパ組織が完成していない孵化直後のstage 24から幼生となるstage 30まで、複数の発生段階において、各個体からそれぞれDNAを抽出し、VLR遺伝子(VLRA、VLRB、VLRC)をPCRで増幅し、解析したが、現時点では、発生過程における各VLR遺伝子再編成の開始時期、多様性などに関しては明らかになっていない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
論文査読者からの指摘に従い、追加の実験を行った。実験結果の解析、および論文の改訂に時間がかかっている。
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今後の研究の推進方策 |
(a) 未熟リンパ細胞におけるgermline LRR セグメント転写 ヤツメウナギの幼生の1次リンパ組織からリンパ細胞を取り出し、sortingによりsingle cellを多数単離する。各single cellから全cRNAを増幅し、ライブラリーを作製する。それぞれのライブラリーに関して、未熟リンパ細胞で発現していると考えられているCDA1/CDA2の発現と、germline LRR セグメントの発現をPCRにより確認する。CDA1/CDA2を発現する細胞でgermline LRR セグメントが同時に転写されていれば、モデルを支持するデータとなる。
(b) 未熟リンパ細胞に特異的に発現する遺伝子の同定 また、上記ライブラリーを用いて、DA1/CDA2を発現する細胞と発現していない細胞におけるcDNAを比較することにより、DA1/CDA2を発現する未熟リンパ細胞で特異的に発現している遺伝子を同定することが可能になる。この中には、VLR遺伝子再編成に関与する新規遺伝子が含まれている可能性がある。
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次年度使用額が生じた理由 |
追加実験とその結果の解析、および論文改訂に時間がかかったため、助成金使用が最初の予定より少なくなった。
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次年度使用額の使用計画 |
昨年度に終了できなかった実験を完了させる。
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