研究課題
癌のリンパ節転移に関する理解は大きく遅れており、リンパ節の組織微細構造や非血球系ストローマ細胞についての最新知見を適用して、転移成立機序の解明を目指す必要がある。リンパ節に浸潤した癌細胞は、細網細胞やリンパ管・血管内皮細胞などのストローマ細胞との接触・相互作用により、両者の性状変化や局所免疫抑制、最終的には遠隔転移に繋がる「転移支援微小環境」が形成されている可能性がある。本研究では、マウス上皮性癌転移モデルを用いて癌細胞のリンパ節内動態やストローマ細胞・免疫細胞との接触過程を詳細に観察するとともに、癌細胞と各ストローマ細胞の相互作用による性状変化を究明する解析システムを構築し、リンパ節転移を制御するための分子標的同定への足掛かりとすることを目的とする。今年度は、C57BL/6マウス由来の乳癌細胞株E0771を同系マウスの第5乳腺皮下に移植後、1週間ごとに鼠径および腋窩リンパ節への転移を経時的に観察するとともに、リンパ節組織構造や免疫細胞の変化、ストローマ細胞との接触について検討を行った。直近の鼠径リンパ節転移癌巣は3週目頃から辺縁洞の底面リンパ管内皮層を破り、皮質に向かって拡大を始めていることが観察され、5週目には髄質に到達しているものが認められた。Desmin陽性のストローマ細胞ネットワークは転移癌巣の辺縁部で接触し、癌の増殖に従って次第に押し出され、転移癌巣内には見られなかった。したがって、転移癌細胞とストローマ細胞の相互作用はこの辺縁領域で進行すると考えられる。一方で、癌巣内には血管が入り込んでおり、ここから血行性の遠隔転移に移行する可能性が示唆された。また、転移癌巣内には多数のマクロファージの侵入が認められたが、リンパ球の侵入は限定的であった。これらの知見により、転移癌細胞がリンパ節内の微細構造を変えながら拡大していく過程の詳細が明らかになった。
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