研究課題
これまで腸内細菌叢を構成する細菌種の多様性の減少や特定菌種の増減など腸内細菌異常が様々な疾患の発症と関連していることが明らかになってきている。しかしながら、どのような原因で腸内細菌異常が起こるのか、どのような細菌種が疾患発症に関与しているかについては明らかになっていない。そこで本研究では、口腔内細菌が腸内に定着し腸管免疫系の活性化に寄与しているのではないかと考え、研究を行った。昨年度に、腸管に定着すると強くTh1細胞を誘導する40B3株とほとんど誘導しないKCTC2242株のゲノム配列を比較し、これらの株で非常に相同性が高いことを見出し、これら2株間で異なる領域を3個同定した。そのうちD-alanyl-D-alanine-carboxypeptidaseやD-alanine--D-alanine ligase Aなど細胞壁ペプチドグリカンの構成に必要なタンパク質をコードしている遺伝子が含まれている領域に着目し、40B3株から欠損した変異株とKCTC2242株へ挿入した変異株の作製を行った。これらの変異株を無菌マウスに経口投与し、それぞれの単独定着マウスを作成した。投与3週間後に大腸のTH1細胞の活性化を解析したところ、40B3欠損株は40B3野生株と比較して少し弱い程度であった。KCTC2242挿入株に関してはKCTC2242野生株と比較して有意にTH1細胞が活性化されていたが、40B3野生株と比較すると半分程度の強度であった。以上のことからKlebsiellaのTH1細胞活性化に関与する候補領域を同定したが、変異株を用いた解析からこの領域はTH1細胞活性化に関与はするがそこまで大きな寄与はないと考えられた。そのため、さらに詳細にゲノム比較を行うことにより候補領域・遺伝子を探索する必要があると考えられた。
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Nat Microbiol.
巻: 4 ページ: 492-503
10.1038/s41564-018-0333-1