研究課題
従来の免疫担当細胞のFACSや定量PCRによる解析手法では、集団の「傾向」を見るにとどまり、詳細なクローン組成や個々の細胞における定量情報は皆無であった。近年、シングルセル解析の技術によってT細胞受容体のレパトア解析が行われるようになってきた。TCRはα鎖とβ鎖のペアによって構成されているが、これまで行われてきた研究のほとんどは、TCRαおよびβ鎖のどちらかを遺伝子組み換えによって1種類に固定しておき、残りのペアのバリエーションを調べるというものであり、より自然な状態でのレパトア解析が求められている。遺伝子にタグをつけるバーコード法の登場により、シークエンス解析から得られた複数の遺伝子の読み取り情報を、タグ情報によって個々の細胞へと帰属することが可能となっている。本申請グループでは本手法を応用することで、リンパ球のTCRペア情報を、個別に、バイアスなく、そしてハイスループットに検出することが可能にできると考えている。クローンを個々のレベルで「観る」ことで、マスとして同じに見える2つの集団から全く異なる性質を読み取ることが可能と考えられる。今年度はダイナミックな免疫応答が常に生じている腸管免疫系を解析対象とし、大腸炎モデルを作出して、CD4+ T細胞をシングルセルソーティングした。これらの細胞を用いて、T細胞受容体のα鎖とβ鎖の配列のペアを一細胞の分解能かつハイスループットで決定する計測システムを確立するための検討を行った。具体的には、マウスよりT細胞集団を取得した後、個々の細胞をチップ上のウェル内に封入し、一細胞からTCRαとTCRβの増幅を試みた。
2: おおむね順調に進展している
当初の計画に沿って研究が進展している。
今年度の条件検討をさらに進めるとともに、今後は、慢性大腸炎モデルにおいて、腸内細菌に応答して大腸炎を誘発する細胞クローンの解析を実施する。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)
J. Exp. Med.
巻: in press ページ: N/A
PLoS Genet.
巻: 12 ページ: e1006349
10.1371/journal.pgen.1006349
Sci. Rep.
巻: 15 ページ: 33548.
doi0.1038/srep33548