研究課題
本研究では独自に確立した誘導性胚中心B(iGB)細胞培養系を駆使して胚中心B細胞およびメモリーB細胞に特徴的な代謝プログラムを同定し、代謝特性の観点からB細胞記憶の根底を支えるメカニズムを理解することを目的としている。胚中心B細胞はex vivoでの生存率が非常に悪く、十分な細胞数が得られなかった。そこで、iGB細胞を用いてB細胞の代謝プログラムと増殖・分化機構の関係を解析した。ミトコンドリア電子伝達系の阻害剤でiGB細胞を処理すると、胚中心B細胞のマスター転写因子であるBCL6の発現が強力に抑制された。また、ピルビン酸脱水素酵素キナーゼの阻害剤であるDichloroacetateを処理した場合にはBCL6の発現が強力に誘導された。以上の結果から、ミトコンドリア機能の活性とBCL6発現が正に相関することが明らかとなった。また、iGB細胞を用いた解析により、CD19-Akt経路がミトコンドリア電子伝達系の複合体Iと複合体IVの活性を正に制御すること、また、BCL6の発現に必要であることを明らかにした。さらに、RNAスプラシンング制御因子であるPTBP1がB細胞の活性化に伴って発現誘導されること、PTBP1を欠損するiGB細胞では、解糖系酵素Pkm遺伝子産物であるPKM1の発現量がコントロールに比べて数倍に増加し、スプライシングアイソフォームであるPKM2の存在比が減少することを見出した。また、PTBP1のB細胞特異的欠損マウスを作成して免疫したところ、胚中心B細胞数が減少することが判明した。PKM2は解糖系-同化経路を活性化してがん細胞増殖を促進することが報告されている。したがって、活性化B細胞に高発現するPTBP1はPKMアイソフォームの発現を制御して、胚中心 B細胞の増殖または維持を制御する可能性が考えられた。
3: やや遅れている
純化した胚中心B細胞および記憶B細胞の細胞数が、細胞内代謝産物のメタボローム解析を行うには足りなかった。
まず、ナイーブB細胞、iGB細胞およびiMB細胞を用いて、メタボローム解析を行う。その結果を見て、次に、抗原特異的免疫グロブリン遺伝子のノックインマウスをその抗原で免疫し、多数の胚中心B細胞および記憶B細胞を精製して、メタボローム解析に用いる。
試薬の使用量が予想より少なく、予定していた追加の購入を控えることとなった。
次年度の追加購入に使用する。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 3件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件) 産業財産権 (1件)
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