研究課題
インフルエンザ抗原変異に対応可能な交差防御抗体が同定され、ユニバーサルワクチンの新しいターゲッドとして脚光を浴びている。しかし、現行のインフルエンザワクチンではこの交差防御抗体を誘導することが困難であり、誘導を妨げる何らかの抗原側・宿主側の要因が存在すると考えられている。我々は、交差防御抗体を発現するメモリーB細胞からモノクローナル抗体パネルを作製し、交差防御抗体の一部が腸内細菌に結合することを発見した。本研究は、交差防御抗体レパトアの形成に腸内細菌が関与するという仮説をたて、これがワクチン接種後の交差防御性抗体の産生に対して、正負どのような影響を及ぼすのか実験的に検証することを目的として実施した。異なる腸内細菌属間(バクテロイデス属、ユウバクテリウム属、ビフィズス菌属)での結合性の差異を比較するため、各属から数種類の腸内細菌を用意し、インフルエンザ交差防御抗体との結合性を調べたところ、一部の腸内細菌で強い結合性が確認された。特定した腸内細菌株のみを保有するノトバイオートマウスを作製するに先立ち、腸内細菌のいないgerm-freeマウスを用意し、インフルエンザワクチン接種後のHA結合性B細胞応答を解析したところ、交差結合性を含むB細胞応答に複数の影響が認められ、腸内細菌とB細胞応答との新しい相互作用機序の存在する可能性が示唆された。本研究の更なる遂行により、腸内細菌、あるいは腸内細菌成分を利用したウイルス防御抗体の新しい制御技術開発に繋がる可能性があり、学術面への貢献にとどまらず社会や産業界へのインパクトという点でも意義は大きい。
2: おおむね順調に進展している
当初の計画通り、交差防御抗体に強い結合性を有する腸内細菌を特定し、腸内細菌がB細胞応答に影響を与える点も確認されたため、おおむね順調に進展していると判断した。
腸内細菌のいないマウスを用いた解析を進めることで、B細胞と腸内細菌の新規相互作用機序について更なる理解を深めることを軸にする予定である。
腸内細菌を修飾した特殊なマウスの準備状況が予定よりも遅れたため、昨年度予定していた実験の一部を完了できなかったため。
次年度に繰り越した実験にて使用する計画である。
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