研究実績の概要 |
学会・研究会等の議論の場で日本人の質問が少ないことは、しばしば指摘されるが、質問力の体系的な教育の試みはほとんどなされていない。本研究では、質問力育成のために、「学内の発表会における質問振り返り表の活用」「質問評価表の作成による質問の質評価の試み」「質問振り返り表と質問評価表を用いた学会による実践」という3段階による教育手法の開発を計画した。 まず、東北大学で開始した「学内の発表会における質問振り返り表の活用」を、平成29年4月に異動となった東北医科薬科大学の医学部および薬学部でも実施し、有効性を確認した。 次に、「質問評価表」の検討を行った。前回、「重要性」「独自性(意外性)」「レトリック」「ミクロかマクロか(以上、5段階評価)」「benefitの及ぶ範囲(『質問者にとどまる』『聴衆に及ぶ』『発表者にまで及ぶ』の3段階評価)」の5項目による質問評価表の信頼性・妥当性を、2つの学会で検討したが、一部の項目で十分な信頼性・妥当性が得られなかった。そこで、今回、2017年12月の学会で、評価者数を10名に増やし、事前の説明会を綿密に行い、第3回目の信頼性・妥当性検討を実施した。結果は、10演題17質問の級内相関係数の平均測定値は、それぞれ、0.874 , 0.779 , 0.795 , 0.627 , 0.625で、初めて全項目において0.5以上の相関が得られた。また、内容妥当性の平均値は、上記5項目それぞれ、3.1, 4.6, 3.9, 4.0, 3.6であった。 以上より、質問評価表の信頼性・妥当性が得られ、今後これを用いた研究が可能と判断された。
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