昨年度までに得られた以下の研究結果に基づき、今年度は学術論文の執筆と投稿を行い、英文雑誌に掲載された。 茨城県内の調剤薬局に来局した75歳以上の処方データ(連続した40日間:2015/2/1~3/12)を対象に、5剤以上処方されている患者の割合を求め、ガイドラインの「特に慎重な投与を要する薬物のリスト」(以下、リスト)と薬剤名とを照合して潜在的不適切処方(PIMs) と判断されるものを抽出した。リスト内の一部の薬剤は患者の既往歴、現病歴等の背景情報を必要とするが、処方データには患者背景情報は含まれないため、これらの薬剤はスクリーニング対象から除外した。 対象患者8080名に処方された39252剤を研究対象とした。患者の43.1%(3481名)で5剤以上の処方が認められた。リストにおいて使用すべきでないまたは可能な限り使用を控えるとされる薬剤は計2905剤にのぼった。患者の2157名(26.7%)は少なくとも1つ以上のPIMsを処方されていた。抽出された全てのPIMsの中で、睡眠薬が1460剤(50.3%)と最も多かった。5剤以上の処方を受けていることは7.11倍(95%CI:6.29-8.03)、複数の診療科を受診していることは1.51倍(95%CI:1.34-1.71)PIMsの可能性を高めることがわかった。ROC解析においてPIMsのカットオフ値は総薬剤数では5剤、慢性期全身作用薬剤数では4剤と求められたことから、ポリファーマシーの基準を5剤以上とすることが妥当であると考えられた。
|