研究課題/領域番号 |
16K15300
|
研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
関 由起子 埼玉大学, 教育学部, 准教授 (30342687)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 養護教諭 / 救急処置 / 湿潤療法 / 応急手当 / 科学的根拠 / 習得機会 |
研究実績の概要 |
保健室で行われている傷病処置の実態調査 養護教諭計233名を調査対象とし、養護教諭の行う応急処置方法の現状とその処置方法の習得先について、保健室で多く行われる擦り傷、捻挫、鼻血、頭部打撲処置対応について無記名自記式質問紙調査を行った。その結果、根拠に基づく処置は擦り傷処置が1~2割、捻挫処置が約8割、鼻出血処置が約9割、頭部打撲処置が約7割で実践されていたが、根拠が不確かな処置方法も多数実践されていた。さらに、これらは医師・看護師、家庭、保健室から受けた処置等、誰もが経験する場から習得した方法を日々の実践に活かしていることも明らかとなった。また、養護教諭の属性と応急処置方法との関連性はみられなかった。養護教諭が根拠に基づいた応急処置を実践するためには、特定の習得先に依存するのではなく、科学の進歩とともに変わりうる処置方法を状況に応じて活用する能力が必要であり、そのためには養護教諭が個人だけではなく職能集団としての専門的自律性を身に付けることが重要であることが示唆された。
湿潤療法導入に関する促進および阻害要因 養護教諭5名を対象に、保健室での湿潤療法の知識、経験、導入に対する考えについてインタビュー調査を行い、修正版グランデットセオリーアプローチを用いて分析した。その結果、導入を阻む要因として従来より報告されていた教員や保護者の理解不足、費用の他、養護教諭自身の内的要因として、現状のままで特に苦情はない、医療行為であるため保健室では出来ない、新しいことを導入する様々なリスクを負いたくないがあることが明らかになった。このような阻害要因に打ち勝ち湿潤療法を導入するための促進要因として、保健室で出来る湿潤療法の知識がある(自信)、進歩した医療に追いつく処置をしたい(探求心)、傷を早くきれいに治したい(子どもの利益中心志向)という養護教諭の動機づけが重要であることが明らかになった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
H28年度は保健室での傷病処置の実態調査を実習生(学生)に対して行う予定であったが、養護教諭団体の協力が得られ、H29年度以降に行う予定であった養護教諭を対象とした質問紙調査を行った。実習生(学生)に対する調査は、H29年度以降に行うこととした。
|
今後の研究の推進方策 |
今年度以降は以下の研究を実施し分析を行う。また、昨年度の結果も含めて論文の執筆、成果発表を紙面、講演、講座等を通して行う。 1)保健室で行われている傷病処置の実態調査:保健室実習で体験した感染予防および応急手当方法を、養護教諭養成課程の学生を対象とした調査を行い、テキストで学んだ知識と現場での処置方法の相違や疑問点を明らかにする。 2)学齢期の保護者および大学生を対象とした傷病処置の知識に関する質問紙調査:H28年度に実施した養護教諭対象と同様の傷病処置方法に関する質問紙調査を保護者と大学1年生に対して行い、保健室から発信される処置方法の教育的影響について検討する。 3)新たな予防・処置方法の保健室での導入における阻害・および促進要因に関する調査:H28年度に行った調査に引き続き、保健室で実施される科学的根拠が不確かな感染予防策や処置方法を、現場観察やインタビュー調査等により明らかにし、科学的根拠に基づいた処置の実践を促す方策について検討する。
調査対象者である養護教諭に還元できるよう、養護教員会とは密接に連絡を取り合い、本研究成果の紹介や、処置方法に関する講座を開き、科学的根拠のある応急処置方法の普及に努める。また、調査の実施においては学部生や大学院生を積極的に動員し、研究調査がすみやかに実行出来るようにする。さらに当該学生が救急処置方法の正しい理解と実践が出来るよう、研究活動を通して働きかける。調査対象者との打合せ状況や調査実施のマンパワー(学部生、大学院生等)により、調査の順序は臨機応変に変更する。
|