研究課題/領域番号 |
16K15300
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研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
関 由起子 埼玉大学, 教育学部, 准教授 (30342687)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 応急手当 / 大学生 / 教育的効果 / 家庭教育 / 学校教育 |
研究実績の概要 |
本年度は子どもたちがどのように軽微な創傷処置方法を学んでいくのか,特に家庭や学校で実際に見たり受けたりした処置経験の影響(教育的効果)について明らかにした。 A大学B学部の大学1年生全450名に擦り傷,捻挫,鼻血,頭部打撲時の計25の処置(推奨される処置14項目,されない処置11項目)の実施状況とその情報の入手先(家庭,授業中や部活動,保健室,医療機関での処置経験,テレビ・インターネット・書籍)を調査票にて尋ねた。それぞれの処置実施状況を従属変数,処置方法情報の入手先を独立変数とする単変量および多変量解析にて関連性を分析した。 415名から有効回答があった。推奨されない処置のうち4項目(傷口の消毒,捻挫時の冷却スプレーやジェルの使用,鼻出血時にティッシュを鼻に詰める,頭部打撲時にたんこぶ程度であれば活動を再開する)が6割以上の割合で実施されていた。また推奨される処置のうち8項目(擦り傷に湿潤用パッドを貼付・ワセリン塗布・ラップ保護,捻挫時に負傷部位の圧迫や挙上,鼻出血時にガーゼや市販の鼻栓を詰める・鼻の周囲を冷却する,頭部打撲時に体温・呼吸・脈拍を確認する・一時間程度安静にする)において5割以下の実施率であった。処置方法の正誤にかかわらず,ほぼ全ての処置の実施に家庭での処置経験が有意に影響していた。学校(授業中や部活動,保健室)で実施される処置方法は,推奨される処置のみならず,一部の推奨されない処置の実施にも有意に影響を与えており,子どもたち自身の処置実践に強い教育的効果をもたらすことが明らかになった。 次年度は保護者の質問紙調査を分析するとともに,今までの成果を合わせて総合的に分析するほか,現職の養護教諭と共同しながら,科学的根拠のある処置の実践を目指した啓発活動を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では,養護教諭,子ども(大学生),保護者の3者の応急手当の実践を明らかにするとともに,保健室における救急処置の実態を明らかにし,学校での科学的に根拠のある処置の実践を目指すことを目的としている。現在,養護教諭と大学生の調査を終え,特に軽微な傷病の救急処置の問題点が明らかになってきている。また,学会発表や論文化も行い,研究成果の発表も順調に進んでいる。さらに,本研究結果を基に埼玉県の養護教員会と協力し,現職養護教諭への正しい救急処置の啓発活動を行うなど,研究成果を社会的に還元することも行えている。そのため本研究は計画通り,順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は小学生の子どもをもつ保護者への調査を分析し,今まで行ってきた学校,保護者,子ども処置方法の違いを検討し,世代間伝達や学校における処置経験の教育的効果の影響を明らかにする。 さらに学校で正しい処置が実践されるための必要な要因を明らかにし,実際に現場の養護教諭への講義および実践指導を行い,研究成果の社会的還元を目指す。また,研究成果の学会発表や論文化を引き続き行い,同分野の研究者との交流および情報交換により,新たな実践上の取り組みについても互いに検討する。 研究計画の変更は特にないが,大学業務の多さにより研究時間の確保が課題である。データ入力等については外部委託を行い,データの分析には研究テーマに興味のある大学院生および学部生の協力を得る。さらには,現職の養護教諭とも連携し,社会的還元についても研究成果の効果的還元方法を模索する。
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