研究課題/領域番号 |
16K15302
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
木澤 義之 神戸大学, 医学部附属病院, 特命教授 (80289181)
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研究分担者 |
森田 達也 聖隷クリストファー大学, 看護学研究科, 臨床教授 (70513000)
吉田 沙蘭 東北大学, 教育学研究科, 准教授 (70636331)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 意思決定 / 行動経済学 / バイアス |
研究実績の概要 |
平成29年度には、本調査の準備段階として、予備調査の結果を精査した。その結果、患者の治療選択において、アベイラビリティ・バイアスが作用する可能性があると考えられた。特に、患者自身の過去の治療経験、家族等の身近な人物の治療経験によって患者の治療選択への志向が異なることが明らかとなった。これらの点から、今後の調査計画においては、まずは患者自身の経験に基づくアベイラビリティ・バイアスの影響を取り上げて検討することが有効であると考えられた。一方、これまで治療に費やしてきた経済的・精神的・身体的負担によるサンクコスト・バイアスについては患者の治療選択への影響はみられなかった。この点については、当該研究がシナリオを用いた質問紙調査であったため、自身が費やしてきたサンクコストがシナリオには反映されず、関連がみとめられなかった可能性が考えられた。また、フレーミングに関する研究においては、7割の対象者がフレームの影響を受けないことが明らかとなった。通常利得を強調したフレームと損失を強調したフレームとでは、同じデータであっても選択が異なる傾向があるが、シナリオを用いた質問紙調査では、感情が喚起されず、現実場面よりも合理的な判断が可能になっている可能性が考えられた。以上をふまえ、経済学者を含めてディスカッションを行い、対応について検討を行った。その結果、バイアスの影響を測定するためには、現実場面での患者を対象とすることが望ましいが、治療選択に関連する場面において患者を対象に調査を実施することには侵襲性が伴うと考えられる。そのための解決策として、治療選択を行う臨床場面における患者の反応および選択行動の観察と、選択後一定期間を置いた後に行う質問紙によるバイアスの測定を、紐づけて解析するという案が議論された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究参加施設においての倫理審査およびWeb調査の実施が遅延しており次年度実施予定となっているが、質問紙調査の実施と結果の精査は順調に経過している。
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今後の研究の推進方策 |
上記の検討を元に、研究参加予定施設において倫理審査を実施する。研究参加予定施設は、当初の予定どおり、国立がん研究センター中央病院、九州がんセンター、神戸大学附属病院、聖隷三方原病院とする。また並行して、患者の行動経済学的個人特性として、損失回避傾向が治療選択に関連することが想定されるが、既存の測定項目は項目数が多くかつ実験的な要素を多分に含んでおり、外来等で実施する患者を対象とした調査には使用しづらいため、患者を対象としたweb調査において、項目の選定を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究参加施設においての倫理審査およびWeb調査の実施が遅延し、次年度に開始することとなったため、物品費、人件費・謝金、その他経費について執行しなかった。倫理審査用書類の作成に物品費、その他経費、Web調査の実施に人件費・謝金、および調査集計にその他の経費を使用予定である。
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