研究課題/領域番号 |
16K15313
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研究機関 | 久留米大学 |
研究代表者 |
山内 圭子 久留米大学, 医学部, 講師 (50304514)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 治療に関する意思決定 / 乳癌 / 意思決定役割 / 満足度 |
研究実績の概要 |
乳癌女性が治療に関する意思決定の関わり方において体験する格差が乳癌以外の慢性疾患(乳癌以外の癌、慢性腎不全、リウマチ、甲状腺疾患、糖尿病、高血圧症)の女性と違いがあるかどうかを意思決定への役割、医師との関わり方、意思決定に関連する満足の観点からインターネット調査で検討した。 約半数の女性が病気になった場合の治療法をシェアード・ディシジョン・メイキング(SDM)により決めたいと考えていたが、実際にSDMにより治療法を決めたと認識している女性は乳癌群で33%、乳癌以外の慢性疾患群で29%であった(p<0.001)。乳癌の女性では、症状や治療についての医師の説明を80%以上理解したと考える者の割合および医師の説明に対する満足度が有意に高い値を示した。加えて、医師に親切な態度や自信のある態度を求める女性の割合が約10%高値であった。乳癌以外の慢性疾患の女性では、治療の選択が全く無かった考える割合が有意に高く、治療決定プロセスでの満足度および実際に受けた治療に対する満足度が有意に低い値であった。治療法を決める過程で最も後悔していることが、乳癌女性では「情報の集め方」(8.4%)、「医師との関わり方」(7.8%)、「相談する、他の意見を聞く」(6.4%)であったのに対し、乳癌以外の慢性疾患の女性では「病院選び」(10.4%)、「情報の集め方」(9.2%)、「医師との関わり方」(8.1%)と違っていた。 乳癌の女性は医師に、症状や治療についての納得できる説明や高い技術だけでなく、「親身になってくれる」「話を聞いてくれる」等の心理的なサポートを期待していることが示唆された。医師との関係が良好な場合に、医師の説明をより理解したと認識し、それが医師と一緒に最適な治療法を決めることを円滑にし、さらに、意思決定プロセス及び実際に受けた治療に関する高い満足度に関連している事が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
乳癌以外の慢性疾患として、乳癌以外の癌、慢性腎不全、リウマチ、甲状腺疾患(バセドー病、橋本病)、糖尿病、高血圧症を主要な疾患と認識している女性を対象に調査を行った。結果は、上記全ての疾患に罹患している女性の回答をまとめ、乳癌女性の回答と比較した。乳癌以外の癌とその他の疾患では、患者が感じする深刻度や治療決定の緊急度等、差が大きいと考えられる。調査結果もそれを示唆する傾向があり、疾患別での解析が必要であると考え、現在、解析中である。
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今後の研究の推進方策 |
1)乳癌診断後に治療を含めて決定した項目の抽出をインターネット調査で行う。調査は、「乳癌の診断をされてから現在までに決定したことを、治療に関係したかどうかに関わらず挙げて下さい。」というオープンエンド型の質問とし、5項目以上を挙げる形式とする。 2)本年度の調査対象疾患(乳癌を含む癌、慢性腎不全、リウマチ、甲状腺疾患、糖尿病、高血圧症)の既往歴のない健康女性を対象に、乳癌または糖尿病等の慢性疾患に罹患した場合、その治療に関する意思決定にどの程度関わりたいかについてインターネット調査を行う。調査票は、日本語版 Autonomy Preference Indexの状況設定項目の「早期がん」「末期がん」を「乳癌」に変更して使用する。
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次年度使用額が生じた理由 |
インターネット調査実施費用が予定より低額となったため。
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次年度使用額の使用計画 |
調査結果解析に必要な統計ソフトの購入に使用する。
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