乳がんを診断された女性は、術式や術前・術後の治療法の選択だけでなく、治療効果に影響すると考えらえる仕事や家族のことなど、多岐にわたる決定を行っていると考えられる。しかし、乳がん女性の意思決定に関しての研究が少人数を対象にした質的インタビュー研究に制限されていること等から、その全容は明らかになっていない。乳がんを診断された女性が直面する意思決定場面の全容を知ることを目的に、本年度は、550人の女性を対象に乳がん診断により決定した内容に関する自由回答の調査を行った。決定した各内容に関しては、決定した時期と最終決定者、決定の重要度、決定することがどれくらい困難であったか、決定に対する満足度を質問した。また、乳がん女性を配偶者に持つ男性550人を対象に、配偶者が乳がんの診断を受けたことで決定した事柄に関しても同様に調査した。 乳がんを診断された女性の80%以上は何らかの決定をしたと認識していた。決定した内容に、半数以上が最初に治療に関する項目を挙げた(55.5%)。しかし、決定したこと全体に対する割合は約37%であった。反対に、治療以外に関することは2番目以降に多く挙げられ、全体の約41%であった。「治療費に関すること」「仕事に関すること」「子供・親の面倒をどうするか」「妊孕に関すること」の項目が多く挙がった。診断を機に「禁煙」、「食生活の改善」「運動をする」等、生活習慣の改善を決めた女性もいた。また、「人生を楽しむ」「毎日悔いのないように生きようと決めた」「人生設計について考えた」等、乳がんの診断が人生を見つめなおすきっかけになった事を示す内容も多く見られた。また、乳がん女性を配偶者に持つ男性の約76%は、配偶者の乳がん治療に関する決定関わったが、最終決定者は妻であったと認識していた。治療以外に関するとでは「家事に関すること」「仕事に関すること」が挙げられた。
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