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2016 年度 実施状況報告書

分子状水素によるcAMP産生亢進作用の解明

研究課題

研究課題/領域番号 16K15315
研究機関千葉大学

研究代表者

松本 明郎  千葉大学, 大学院医学研究院, 准教授 (60437308)

研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2018-03-31
キーワード分子状水素 / cAMP / 交感神経受容体 / β受容体 / GPCR
研究実績の概要

生体内に取り込まれた分子状水素(H2)が様々な病態に対して有効な作用を示すことが報告されてきたが、その作用機序は依然として明らかではない。そのため、科学的に受容可能かつ有意義な研究成果が、分子状水素の作用を科学的に捉えたとは言い難い発表の中に混在してしまっている状況である。
申請者は、マウスを用いたin vivoの研究成果からH2がβ受容体シグナルを増強する作用を有することを見出し、H2は細胞内セカンドメッセンジャーであるcAMPにより作用を伝達するとの仮説に至った。この仮説の検証を目的とした本研究課題では、H2の作用点をβ受容体シグナル経路上で見出し,H2の作用がβ受容体シグナルに特異的に作用するのか,またはcAMPを共通項として他のシグナル経路でも作用するのかを明らかにすることを目標とした。
本年度は、β受容体経路をモデルとしH2の作用点となる分子を薬理学的手法を用いて明らかにすることを目指した。内在性にβ受容体を発現しているためシグナル解析に頻用されているHEK293細胞で細胞内cAMP濃度測定系を確立した。本測定系は、1時間以上にわたって細胞内cAMP濃度の推移を連続して観察することが可能であるため、受容体刺激からcAMP濃度上昇に至るまでの経路のどこにH2が作用するのか検討することを可能にした。Isoproterenol負荷により生じるcAMP濃度上昇がH2併用により賦活化される程度を比較検討した。Forskolin, IBMX処置では影響が認められなかったことから、Adenylate CyclaseやPDEはH2の主要な作用点ではないと考えられた。また、H2による増強作用はベル型の反応曲線を示した。従来から、in vivoでのH2作用はベル型の濃度応答性を示すことが知られていたため、本実験系の反応性も同様になっていると考えられた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

申請段階では2年目(平成29年度)に予定していた他のGPCR系に対するH2の効果についても、前倒しで検討を開始することが出来た。Gs経路を共通して有するカルシトニン受容体を内在性に発現するLLC-PK1細胞で細胞内cAMP濃度測定系を新たに作成した。本細胞系においてもH2をリガンドと併用することにより細胞内cAMP濃度上昇が増幅されるなど、β受容体と同様の成果が得られている。
一方、1年目(平成28年度)の目標であった、H2併用によるβ刺激増強作用の定量化に関しては、測定結果を十分に安定して得るためには実験の技術的な改善が必要であることが明らかになり、達成することができなかった。そのため、平成29年度も継続して実施する。
平成29年度から実施予定であったH2の効果を動物モデルでGPCR刺激増強作用として捉える計画を前倒しして初年度から開始した。β受容体刺激による影響を モニターしやすい心臓に着目し、体表心電図の解析から内因性のカテコラミンによる刺激をH2が増強させていることを安定して捉える実験系を開発できた。平成29年度初めから解析に用いる。
以上の状況から、一部遅れも認められるが、前倒しで進められている計画も順調に進んでいることから、概ね順調に進んでいると判断した。

今後の研究の推進方策

当初の計画通り、平成29年度はH2併用によるβ刺激増強作用の定量化が可能になるように実験系の改良、データ取得・解析方法の改善を実施する。また、マウスモデルの作成が進んだため、平成29年度はβ受容体刺激に着目したH2の併用効果をマウス個体での反応として示すことを目標とする。
これらの成果が組み合わされ、in vivoの研究成果から導かれた仮説の詳細な検証をin vitroの培養細胞系で実施した成果を、in vivoで新たなH2の生体作用を見出すことに適用する研究サイクルが構築されることが期待される。
最終的には、科学的な論拠に基づく知識を社会へ還元することを目指し、論文発表を今年度中に終えることを目標とする。

次年度使用額が生じた理由

培養細胞を用いた細胞内cAMP測定系が比較的容易に確立され、それを用いた実験も比較的少ない回数でデータを得ることができた。そのため、当初予定していたよりも少ない実験経費(消耗品費など)で予定通りの研究を実施することができた。ただし、計画書では生物発光計測機器の改修を予定していたが、実際の交付金額では必要額を満たすことができず、実施できなかった。そのため、予定外の残額が生じた。研究は大学の共通機器を使用して計測を実施した。

次年度使用額の使用計画

平成29年度は、培養細胞系での測定を継続するとともに、マウスモデルにおける解析を進める。当初の計画には記載していなかったが、残予算を活用することにより幾つかの遺伝子改変マウスに対する分子状水素の作用を追加で検討する。野生型で認められる効果が発現する機序を新たな観点から検討することが可能になり、より多面的なH2分子の作用を検討することができる。また、これまでの研究成果の発表にあたり、オープンアクセスジャーナルを積極的に活用するための掲載料に充当する予定である。

  • 研究成果

    (8件)

すべて 2017 2016

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件) 産業財産権 (1件)

  • [雑誌論文] A Novel Diphenylthiosemicarbazide Is a Potential Insulin Secretagogue for Anti- Diabetic Agent2016

    • 著者名/発表者名
      Kenji Sugawara, Kohei Honda, Yoshie Reien, Norihide Yokoi, Chihiro Seki, Harumi Takahashi, Kohtaro Minami, Ichiro Mori, Akio Matsumoto, Haruaki Nakaya, Susumu Seino
    • 雑誌名

      PLoS ONE

      巻: 11(10) ページ: e0164785

    • DOI

      10.1371/journal. pone.0164785

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Nitric oxide-enhanced Shiga toxin production was regulated by Fur and RecA in enterohemorrhagic Escherichia coli O1572016

    • 著者名/発表者名
      Kimitoshi Ichimura, Takeshi Shimizu, Akio Matsumoto, Shinichiro Hirai, Eiji Yokoyama, Hiroki Takeuchi, Kinnosuke Yahiro, Masatoshi Noda
    • 雑誌名

      Microbiology Open

      巻: e461 ページ: e461

    • DOI

      10.1002/mbo3.461

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] NOストレス環境における腸管出血性大腸菌のNO代謝酵素の役割2017

    • 著者名/発表者名
      清水健、松本明郎、野田公俊
    • 学会等名
      第90回日本細菌学会総会
    • 発表場所
      仙台国際センター(宮城県仙台市)
    • 年月日
      2017-03-19 – 2017-03-21
  • [学会発表] NOを活用した細菌感染制御機構2017

    • 著者名/発表者名
      松本明郎、清水健
    • 学会等名
      第90回日本薬理学会年会
    • 発表場所
      長崎ブリックホール(長崎県長崎市)
    • 年月日
      2017-03-15 – 2017-03-17
  • [学会発表] マイクロバイオマシンによる生体内NO測定系の開発2016

    • 著者名/発表者名
      松本明郎
    • 学会等名
      第67回日本薬理学会北部会
    • 発表場所
      北海道大学学術交流会館(北海道札幌市)
    • 年月日
      2016-09-30 – 2016-09-30
  • [学会発表] 分子状水素によるグレリン産生亢進に関与する交感神経受容体シグナル活性化機構の解明2016

    • 著者名/発表者名
      松本明郎
    • 学会等名
      第16回日本抗加齢医学会総会
    • 発表場所
      横浜パシフィコ(神奈川県横浜市)
    • 年月日
      2016-06-11 – 2016-06-11
    • 招待講演
  • [学会発表] SNO Signaling2016

    • 著者名/発表者名
      Akio Matsumoto
    • 学会等名
      The 9th International Conference on the Biology, Chemistry, and Therapeutic Applications of Nitric Oxide
    • 発表場所
      仙台国際センター(宮城県仙台市)
    • 年月日
      2016-05-20 – 2016-05-22
    • 国際学会
  • [産業財産権] 組換えベクター、該ベクターで形質転換された微生物を利用した一酸化窒素消去を抑制する化合物のスクリーニング方法及び細胞内一酸化窒素濃度の測定方法2016

    • 発明者名
      松本明郎、清水健、野田公俊
    • 権利者名
      松本明郎、清水健、野田公俊
    • 産業財産権種類
      特許
    • 産業財産権番号
      特願2016-114134
    • 出願年月日
      2016-06-08

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公開日: 2018-01-16  

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