研究課題/領域番号 |
16K15317
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
佐々木 勉 大阪大学, 医学部附属病院, 助教 (20534879)
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研究分担者 |
平田 佳之 大阪薬科大学, 薬学部, 助手(移行) (00745854)
長岡 康夫 関西大学, 化学生命工学部, 教授 (90243039)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 蛋白相互作用阻害剤 / p53 / 神経保護剤 / 低分子化合物 / 脳虚血 / パーキンソン病 |
研究実績の概要 |
PPI阻害剤としては、分子量1000以上の中分子であるラパマイシン、タクロリムス、高分子ペプチドなどが多く報告されている。しかしながら、これら中、高分子は脳内移行性は低い。そこで我々は、分子量200~300の低分子PPI阻害剤につき、独自のPPI阻害剤ライブラリーを構築した。p53-MDM2のPPI阻害剤としてはNutlin-3aが有名であるが、今回p53-MDMXのPPI阻害剤として独自のK-178(分子量253)、K-181の構造、抗癌効果、動物投与時の体重変動を報告した(Bioorg Med Chem. 2016)。本論文においては、K-178、K-181 とその周辺化合物について、p53と相互作用が知られているp53-mdm2 p53-mdmx p53-death-associated protein kinase 1 (DAPK1)、p53-peptidylprolyl isomerase D (PPID)の相互作用阻害について報告。我々の独自のPPI阻害剤特に神経細胞においては、p53は、ネクローシス、アポトーシス、ネクロトーシスなどの広範な細胞死において関与することが報告されている。これら神経細胞死に関与するp53とDAPK1並びに PPIDとの改変ELIZA法での結果を報告した。今後のHTSスクリーニングに対応するようなα―スクリーニングの系を確立した。これらの独自の化合物について初代神経細胞培養系における脳虚血モデル、SH-SY5YにおけるMPTP(パーキンソン病)モデルでの神経保護効果につき、特許出願した。脳内血管新生への効果として、K-178、K-181、K-630などを投与時のtube-formation assayを施行し、新生血管への効果を確認した。又、K-178、K-630の脳内移行性について、経口投与し、その神経保護効果を確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
我々は、PPI阻害剤を神経保護剤として開発するために、従来の中分子並びに高分子を主とするPPI阻害剤では脳内移行性が低いと判断し、脳内移行性が期待できる低分子化合物からなる独自で開発した低分子化合物からなるPPI阻害剤における検討を中心に施行した。本年度においては、まず独自の低分子化合物よりなる蛋白ー蛋白相互作用阻害剤ライブラリーのp53を中心とした阻害作用、各化合物の構造、in vivo投与時の体重変動、アポトーシスへの効果などにつき論文報告したBioorg Med Chem. 2016)。また、これらの神経保護効果についてスクリーニングを施行し、それらのin vitroにおける脳虚血モデル、MPP+(パーキンソン病モデル)に対する神経保護効果を有する化合物を抽出した。また、in vivoにおいてはMPTPモデルにおける神経保護効果について、こららのPPI阻害剤の経口投与における効果を検討し、経口投与における神経保護剤を抽出できた(特許出願ずみ)。更に、血管新生への効果としてtube-formation assayを施行した。またPPI阻害効果に関するアッセイ系、実験系としては、α―スクリーニングに加えて、生体分子間相互作用解析装置(Biacore T200)を用いて、検証実験を繰り返し施行している。これらの論文報告、特許出願などは、本研究課題当がおおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
本年度までは、p53 negative regulatorを中心に検討してきたが、今後、p53と神経細胞死に関与するdeath-associated protein kinase 1 (DAPK1)やcyclophilin D(CypD)とp53との相互作用については、更なる新規化合物の設計、合成などの検討を進める。また、更にp53 negative regulatorだけでなく、p53 positive regulatorについての検討を推進する。また、本年度において、in vitroの虚血モデル、パーキンソン病モデルにおいて神経保護効果が示唆された化合物については、今後、各々、経口投与によるin vivoモデルにおける神経保護効果、即ち、脳梗塞モデルとしての中大脳動脈閉塞モデルにおける神経保護効果、慢性脳虚血モデルにおける効果、並びにMPTPモデルを用いたパーキンソン病モデルなどを用いた効果、そしてこれらの神経保護メカニズムについての検討を推進する。更に、今後これらのPPI阻害剤のHTSスクリーニング系の確立(α―スクリーニング,TR-FRET)を更に推進する。また細胞内におけるPPI現象を病態モデルにおいて検討するために、現在BRET(生物発光共鳴エネルギー転移)の系を推進しており、現在までに多様な、各種蛍光アクセプター、生物発光ドナー(ルシフェラーゼ)の組み合わせが施行されてきているが、どの様な生物発光ドナーと蛍光アクセプターの組み合わせが良いかの検討と、それらの神経病態モデルへの応用を推進する。また、PPI現象の検出とPPI阻害効果の検証については、生体分子間相互作用解析装置(Biacore T200)を用いた更なる検討を施行する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究課題に使用する試薬が、国内に在庫がなく、海外よりの取り寄せになったため、納期が大幅に遅れ、それに伴い納品が遅れたためである。
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次年度使用額の使用計画 |
海外からの試薬が到着次第、実験を開始し、本研究を予定どうり遂行できるように研究を進める。
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