研究課題/領域番号 |
16K15319
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
林 日出喜 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 准教授 (10218589)
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研究分担者 |
長谷川 寛雄 長崎大学, 病院(医学系), 准教授 (00398166)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 自己削除型ベクター / レンチウイルス / アデノ随伴ウイルスベクター / ゲノム編集 / CRISPR/Cas9 / 遺伝子ノックアウト |
研究実績の概要 |
ゲノム編集技術CRISPR/Cas9を利用した「自己削除型」レンチウイルスベクターによる遺伝子治療法の開発のため、研究計画に従い、ウイルスベクターの構築を行った。まず、このsgRNAsによる特異的遺伝子のノックアウトを検討するため、恒常的なノックアウト効果、及びTetによる誘導可能なノックアウトをGFPの蛍光で容易に判定のできる293T細胞(LTR-GFP-LTR、の形でランダムにゲノムに組込み)を作成した。これらの細胞にGFP、LTRを標的とするsgRNAを恒常的に発現させ、GFPが減弱することを確認した。また、ノックアウト効果をsgRNA発現ユニットを1~数個タンデムに配列させて検討したところ、異なる箇所を2個ターゲットした場合が最も効率よく、ノックアウトできた。しかしながら、これらの標的遺伝子のsgRNAを改変H1-2O2の下流につなぎTet-誘導性のGFP蛍光を観察したが、誘導性の除去ができなかった。単純なベクター構築では機能していた改変H1-2O2プロモーターの誘導発現が、この複雑なベクター構築の際はうまく機能しなかった。 一方、ノックアウトの方法としてsgRNA発現ユニットと切断部位周辺の相同配列、stop codonをドナーDNAとして載せたアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターを使う方法でも、効率のよいノックアウトができた。 ベクターの各コンポーネントの機能は確認できたので、誘導性のノックアウトができるよう各コンポーネントのつなぎ方等を再検討する。また、本課題の目的、レンチウイルスベクターを使った目的遺伝子のノックアウトの後、使用したレンチウイルスの除去を達成するため、1つのベクターにすべてのコンポーネントを収めることにこだわらず、挿入できるサイズは大きくないが宿主細胞のゲノムに組込まれにくいAAVベクターも使って段階的に進める実験も並行して行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
ノックアウトを評価する細胞系を作成し、「自己削除型」レンチウイルスベクターの構築を行い、恒常的なノックアウトはうまく機能したが、標的遺伝子のsgRNAを改変H1-2O2の下流につないだTet-誘導性のノックアウトがうまく機能しなかった。 ベクターの各コンポーネントの機能は確認できたので、誘導性のノックアウトができるよう各コンポーネントのつなぎ方等を再検討する必要が出てきた。また、1つのベクターにすべてのコンポーネントを収めるため、ベクターのサイズが大きくなりすぎた可能性も否定できないので、本課題の目的、レンチウイルスベクターを使った目的遺伝子のノックアウトの後、使用したレンチウイルスの除去を達成するため、1つのベクターにすべてのコンポーネントを収めることにこだわらず、挿入できるサイズは大きくないが宿主細胞のゲノムに組込まれにくいAAVベクターも使って段階的に進める実験も並行して行う必要もでてきた。
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今後の研究の推進方策 |
1.誘導性のノックアウトができるよう、「自己削除型」レンチウイルスベクターの各コンポーネントのつなぎ方等を再検討する。 2.レンチウイルスベクターとAAVベクターの長所を生かして、レンチウイルスベクターによる目的遺伝子のノックアウトの後に、このゲノムにランダムに組込まれたレンチウイルスベクターの除去を行う方法も検討する。具体的には1)レンチウイルスを使いCas9と標的遺伝子特異的sgRNAを恒常的に発現させ、標的遺伝子をノックアウトする。2)このウイルスベクター両端のLTRをターゲットとしたsgRNA発現AAVベクターを使ってレンチウイルスベクターを除去するという方法である。 これまでにレンチウイルスベクターで導入したCas9活性を使い、特異的sgRNA発現ユニットを使い目的遺伝子を効率よくノックアウトできているで、レンチウイルスベクターのLTRをターゲットとしたsgRNAによるレンチウイルスベクターの除去を試みる。Cas9のmRNAあるいはタンパク質の導入でもsgRNAの機能が発揮できることから、この方法でゲノムに挿入されたレンチウイルスベクターを除去可能と推察される。 しかしながら、自己を除去途中でCas9の活性が不充分になる可能性もある。その場合は、このレンチウイルスベクターのCas9活性を利用し、第2のCas9をN-末端側とC-末端側に分けてAAVベクターに載せ、Safe Harbor(その領域が欠失してもフェノタイプに影響を及ぼさないと考えられている遺伝子領域)に導入する(この方法は既に確立されており、Cas9は両端にLTRを持たない)。その後に、両側にLTRを有するレンチウイルスベクターのLTRをターゲットとしたsgRNA発現AAVベクターを使い除去する。第2のCas9はSafe Harborに残るが、LTRも有しないため安全性は高いと考えられる。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)実験計画の変更に伴う進捗の遅れのため、次世代シーケンサー(北海道システム・サイエンス(株)のPindelとBreakDancerというプログラム)使用に計上していた予算の執行が遅れたため。
(使用計画)次年度に次世代シーケンサー(北海道システム・サイエンス(株)のPindelとBreakDancerというプログラム)使用に計上していた予算の執行を行う予定である。
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