研究課題/領域番号 |
16K15322
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
有馬 英俊 熊本大学, 大学院生命科学研究部(薬), 教授 (50260964)
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研究分担者 |
本山 敬一 熊本大学, 大学院生命科学研究部(薬), 准教授 (50515608)
東 大志 熊本大学, 大学院生命科学研究部(薬), 助教 (20613409)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ゲノム編集 / 家族性アミロイドポリニューロパチー / トランスサイレチン / 非ウイルスベクター / 肝臓特異的デリバリー / シクロデキストリン / デンドリマー / 結合体 |
研究実績の概要 |
本研究では、TTR-FAPに対する新規治療法としてゲノム編集技術の開発を目的に検討を行っている。平成 29 年度においては、次の知見を得た。1)肝実質細胞特異的非ウイルスベクターとしてのラクトシル化デンドリマーとα-シクロデキストリンとの結合体(L-a-CDE)に加えて、静脈内投与後の細網内皮系からの補足を回避するために、L-a-CDEにPEG修飾を行った PL-a-CDEを新規に構築した。2)PL-a-CDE は、TTR-CRISPR DNA(以下DNA)と複合体を形成し、その形成効率はL-a-CDEと同等であった。(3)DNA/PL-a-CDE 複合体は、チャージ比 50 においてL-a-CDE 複合体に比べて、わずかに大きな粒子径および中性荷電を有するサブミクロン粒子であることが示された。(4)本複合体をヒト肝がん細胞である HepG2 細胞にトランスフェクションすると、アシアロ糖タンパク質受容体を介して細胞内に導入され、その一部は核に移行し、レポーター遺伝子である GFPを発現することが示された。(5)Surveyor nuclease assay の結果から、DNA//PL-a-CDE複合体は、L-a-CDE複合体の場合と同様に異型TTR 遺伝子を切断することが確認された。(6)本複合体は、HepG2 細胞にトランスフェクション後、チャージ比 200 まで細胞障害性を示さないことが認められた。(7)興味深いことに、L-a-CDE および PL-a-CDE は、in vitro においてTTR のアミロイド線維の形成を有意に抑制することが示された。これらの結果から、DNA/PL-a-CDE 複合体は、培養細胞条件下、L-a-CDE 複合体と同様に異型 TTR に対してゲノム編集が可能であり、in vivoでのゲノム編集効果に優れる可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成29年度の当初の研究計画では、TTR-CRISPR DNA および L-a-CDE を用いて in vivo 研究を実施するという計画であったが、予備的検討により、in vivoにおいてより優れたゲノム編集効果が期待できる非ウイルスベクターの開発の必要性を痛感し、今回、L-a-CDEにPEG修飾を行った PL-a-CDEの構築を新規に行い、TTR-CRISPR DNAとの複合体形成能、物理化学的性質、培養細胞系での細胞取込、遺伝子発現効率、ゲノム編集効率、細胞障害性などについて、L-a-CDE複合体の場合と比較検討する研究を実施したことから、in vivo研究を本格的に実施するところまで辿りつけなかった。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度には平成 28 年度および29年度に見出した知見を踏まえて、TTR-CRISPR DNA および PL-a-CDE およびL-a-CDEを用いて in vivo 研究を実施する。すなわち、HepG2 細胞におけるゲノム編集効果に関する検討を複数のTTR-CRISPR DNAを用いて引き続き行う。次に、熊本大学発生医学研究所の山村教授らによって開発されたヒトV30M TTR(世界の患者で最も多い変異)のノックイン Tg マウス(FAP Tgモデルマウス)に静脈内投与後のTTR-CRISPR DNAの体内動態、ゲノム編集に関するオンターゲット効果ならびにオフターゲット効果、有効性(肝臓におけるTTR遺伝子発現、血中の TTR タンパク質量、TTR のアミロイド繊維形成、病態改善)および安全性(血液生化学検査、組織染色)に関する検討を行う。
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