研究課題
ヘムはミトコンドリアで合成されるが、がん細胞ではワールブルグ効果により解糖系が優先され、ミトコンドリアの活性が低下しているため、ヘム合成が不全状態にある。従って、がん細胞にヘムの材料であるアミノレブリン酸(ALA)を投与すると、最終的なヘム合成に至らず前段階のプロトポルフィリンIX(PPIX)が蓄積する。PPIXは、励起光を当てると蛍光を発することから、この蛍光を検出することにより特異的にがん細胞が同定可能である。本研究ではこの理論とフローサイトメトリーを組み合わせた新たな造血器腫瘍の微小残存病変の光線力学診断法を確立することを目指し、研究を進めた。各種造血器腫瘍細胞株を用いて、検出法の確立を目指したところ、骨髄腫細胞株であるKMS18細胞においてPpⅨの蓄積を最も効率よくフローサイトメトリーで検出することができた。GABAによる競合的阻害でALA添加によるPpIXの蓄積が抑制されたことから、ALAはALA輸送体を介してKMS18細胞に取り込まれている可能性が示唆された。さらに、KMS18細胞と末梢血単核球を分離できる条件を確立した。最終的な目的である微小残存病変検出のために、多発性骨髄腫症例のプライマリーの腫瘍細胞と正常単核球がこの条件にて感度よく分離できるかどうか検討したが、凍結保存した腫瘍細胞では解析が困難であったため、現在凍結前の生細胞を用いて検討を重ねている。また、結腸癌細胞株であるCaco2細胞を用いて、細胞内の取り込まれたALAの動態を解析したところ、ALAは細胞に取り込まれた後ヘムもしくはPPXIの合成に用いられること、またその一部は細胞を透過し再放出されることが、明らかとなった。造血器腫瘍細胞株においても同様にALAの細胞内動態を明らかにすることを目指しているが、造血器腫瘍細胞株は浮遊細胞であるため実験系の改変が必要であり、まだ解析結果は得られていない。
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Biochem Biophys Rep
巻: 13 ページ: 105-111
doi: 10.1016/j.bbrep.2017.07.006.