研究課題/領域番号 |
16K15328
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
山本 晋 愛媛大学, 医学系研究科, 寄附講座助教 (70646992)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 2光子励起顕微鏡(TPEM) / 非アルコール性脂肪肝炎症(NASH) / 第二次高調波発生(SHG) / 自家蛍光(AF) / ビタミンA |
研究実績の概要 |
現在、NAFLDからNASH、肝硬変、肝細胞癌の発症が増加している。NASHの確定診断は、組織生検で肝脂肪化や線維化、炎症性細胞浸潤の程度が参考にされているが、客観的指標はない。NASH進行例の早期発見が、肝硬変、肝細胞癌を抑制するのに必要である。本研究は、NASHの病期進行での肝線維化を、2光子励起顕微鏡でSHGシグナルとして定量的評価を行い、NASHへの進行を早期に診断可能にする新たな客観的指標を確立することを目的とした。平成28年度は、肝線維化への過程を、NASHモデルマウスを用いて2光子励起顕微鏡で無染色、in vivo観察し、定量的評価を行った。NASHへの進行とともに肝表面のSHGで示されるコラーゲン線維の構造変化が確認された。肝表面のコラーゲン線維構造は病理組織検査で評価することが出来ない。肝表面コラーゲンの構造変化を画像解析することで、有意な変化としてとらえられた。この結果により2光子励起顕微鏡を用いた低侵襲的にかつ無染色でのNASH進行例のふるい分けが可能となり、腹腔鏡と融合した新規デバイスとしての臨床応用が期待される。この成果はQuantitative imaging of fibrotic and morphological changes in liver of non-alcoholic steatohepatitis (NASH) model mice by second harmonic generation (SHG) and auto-fluorescence (AF) imaging using two-photon excitation microscopy (TPEM):Biochemistry and Biophysics Reports Volume 8, December 2016, Pages 277-283に投稿した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の予定としてNASHモデルマウスを用いて、NASH進行における2光子励起顕微鏡による新たな客観的指標を検討した。NASHへの病期進行に伴って、主に肝表面のコラーゲン線維の構築の乱れを2光子励起顕微鏡を用いた第二次高調波発生(SHG)イメージとしてとらえることができ、その変化を画像解析ソフトにてNASH進行におけるSHGシグナルの有意な変化としてとらえることができた。肝表面のコラーゲン線維の構築は、従来の病理組織検査では確認することができない新たな評価ポイントとして有用であると考えられた。また、2光子励起顕微鏡を用いた肝内部の観察では、無染色でビタミンAを中心とした肝内部の自家蛍光の有意な変化をとらえることもできた。以上、NASHモデルマウスを用いてNASHへの病期進行における客観的評価方法の確立という研究成果を得ることができ、論文投稿や、学会発表でもこれまでの成果を報告することができ、本年度の予定は順調に遂行できていると考えられた。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究推進の方策として、本年度で得られた新たな評価ポイントを指標に、引き続きNASHモデルマウスを用いて、治療(栄養療法など)介入を行う。 治療介入後のNASHの改善過程において新たな評価ポイントに可逆的な改善が認められるかを確認する。 2光子励起顕微鏡で得られたSHGシグナルの結果と、他のバイオマーカーとの比較を行うことで、このSHGシグナルによる評価方法が、NASH進行例の悪化を予測する新たな客観的指標になると同時に、改善を予測しうる新たな客観的指標となりうることを確認する。
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