研究実績の概要 |
基礎研究:マウスに高脂肪食、高脂肪高コレステロール食を負荷して、肝臓と脂肪組織のアポD発現量を検討したところ、脂肪組織でのみアポD発現量が増加していた。アポDアデノウイルスを用いて、慢性炎症モデルである高脂肪食負荷食餌誘導肥満マウスにアポDを過剰発現させたところ、血糖値に変化は認めなかったが、インスリン値はアポD群で低下し、インスリン負荷テストからはアポD群ではインスリン抵抗性が改善している可能性が示唆された。LPS誘導敗血症モデルマウスでのアポD強発現の検討では、強発現群において炎症性サイトカインの上昇が抑制されることが判明した。また、アポDを強発現させたHepG2細胞の培養上清をRAW264.7細胞に投与したところ、LPSによる炎症性サイトカイン誘導が著明に抑制された。以上より、アポDは抗炎症的に作用することが示唆された。 臨床研究:「アポ蛋白Dと慢性炎症・糖尿病・糖尿病合併症・動脈硬化症との関連の検討」(UMIN R000030557)を開始した。この研究では、当初予定の登録時のアポDと各種パラメーターをみる横断的検討に加え、9年次までのアポDや各種パラメーターと糖尿病合併症・動脈硬化症の進展度を観察することとした。患者選択基準は「インスリン非投与の35歳以上75歳未満の、HbA1c 9.0%未満の2型糖尿病患者で、重篤な疾患を有していない者」とした。現時点で41名の登録を行い、本年度はこの41名の横断的解析を行った。アポD濃度と糖尿病合併症との間には有意な相関を認めるものはなかったが、PAI-I(R=-0.489, p<0.01)、アポAI(R=0.517, p<0.01)、アポAⅡ(R=0.491, p<0.01)、尿酸値(R=-0.435, p<0.05)に関してはアポD値と相関を有することが判明した。今後、縦断的検討で合併症進行などとの関連を検討する。
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