最終年度は、前年度に絞り込んだiPS細胞由来RPE細胞の移植用品質管理マーカー検出用のプライマーを高純度で作成して、デジタル検出の有効性を確認した。 まず、通常の検出方法のスペックを検証した。昨年度増殖曲線の解析から標的分子の有無と、融解曲線解析から野生型/変異型であるかの判別が可能であることを確認したが、定量性はなく核酸濃度が10倍異なってもその差異を判別できないことが明らかにした。今年度は、新たに濃度が標的分子の濃度が薄くなると検出できないこと、野生型に変異型が混在する場合に両者を定量可能か検証したところ、シグナルが融合して両者を判別・定量できないことを確認した。 マイクロ流路を活用してデジタル化するプラットフォームを活用して上記の改良を試みた。すると、通常の方法では検出できない低濃度の標的であっても検出可能になり、さらに2倍程度の小さい濃度差を判別できることが分かった。また、野生型と変異型が混合したサンプルであっても、デジタル化した個々のwellの融解曲線は、野生型、変異型、全くない、のいずれかで、wellをカウントして得た定量値は仕込み量に相関しており、上記と同様に2倍程度の小さい濃度差であっても判別可能であった。 マイクロ流路を用いたプラットフォームは高価であるため、より低価格でデジタル化することが見込めるチップタイプの測定系の構築を検討した。温度制御しながら蛍光顕微鏡観察するための簡易的な温度制御装置を自作して、一般的な蛍光顕微鏡でも温度制御しながらデジタルチップのwellを評価できることを確認した。また、この検査方法の解析データを安定化させるために、検査対象であるiPS細胞由来RPE細胞の検査前の細胞の状態を維持するために保存方法に関して検討し、最適な温度条件も見い出した。
|