研究課題/領域番号 |
16K15338
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
田口 徹 富山大学, 大学院医学薬学研究部(医学), 客員准教授 (90464156)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 痛み / 侵害受容 / 受容器 / 効果器 / 光遺伝学 / 薬理遺伝学 / 痛覚過敏 / 恒常性 |
研究実績の概要 |
痛みは医療の根源と言える。もし痛みのON/OFFをミリ秒単位で自由自在に制御できれば、患者の疼痛緩和やそれによる医療経済的メリットが期待できる。今回、我々はアデノ随伴ウィルス(AAV)ベクターをマウスやラットの末梢神経や末梢組織へ局所投与し、痛覚受容を担う末梢侵害受容器に特異的にチャネルロドプシン(ChR2)やアーキロドプシン(ArchT)などの光活性化分子を発現させ、特定波長の光照射で痛覚線維の発火や痛覚行動を制御する技術・評価手法の開発を試みた。また、痛みや筋肉量減少を伴うサルコペニアの治療法開発を念頭に、AAVベクターを用いてChR2を骨格筋に導入し、光照射による筋収縮の非侵襲的誘発を試みた。 現在までに種々のプロモータやセロタイプを組み合わせた多くのAAVベクターを用い、遺伝子導入部位や方法を試行錯誤しながら、末梢神経、特に痛覚受容線維への光活性化分子の発現や機能確認を行っているが、実用的な段階に至っていない。 また、本研究では光遺伝学の末梢組織へのさらなる応用を目指して、末梢神経のみならず、骨格筋へのChR2の遺伝子導入を試みている。現在、数種のAAVベクターの筋内局所投与により、微弱ではあるが、肉眼で確認できる筋収縮を惹起することに成功している。一方、明らかな細胞傷害性を示すAAVベクターが確認されたことから、安全面での問題も浮き彫りになった。今後、遺伝子導入法のさらなる改良により、ChR2の発現効率を向上させ、筋肉量減少を伴うサルコペニアや、筋の一部に「コリ」を有する筋・筋膜性疼痛の病態解明に向けた実験モデルの開発に生かしていきたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
申請者自身の異動(名古屋大学→富山大学)と異動先研究室の耐震改修工事があり、実験室の引越に伴うセットアップに相当の時間と労力を払った。ようやくセットアップできて、実験が始められる環境が整ったものの、所属寄付講座の突然の閉鎖により、平成29年度はまた異動を予定している。この間、本研究開始に先行して取得していたデータの解析や遺伝子改変動物の受け入れについては目途が立ってきた。H29年度はいち早く実験セットアップを立ち上げ、研究計画を軌道に乗せる。
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今後の研究の推進方策 |
本研究計画の採択前に先行して取得したデータの解析を行ったところ、アデノ随伴ウイルスベクター(AAV)を用いた光活性化タンパク(ChR2)の侵害受容器への導入、およびこれによる疼痛制御や効果器機能の表出は上手くいっていない。平成29年度はAAVではなく、主として遺伝子改変動物を用いた末梢神経の光遺伝学操作に切り替えて、痛覚過敏やアロディニアのメカニズム解明や治療の方策を探る予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度は研究計画の申請時に予想できなかった申請者自身の異動と異動先研究室の耐震改修工事が重なり、実験室・実験環境の引越と再セットアップに多大なエフォートが割かれた。また、研究補佐員の募集を行ったが、適任者が見つからず、人件費の執行がなかったため、次年度に使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度は予定通り研究補佐員(1名)を雇用し、人件費を執行する。また、申請時当初は予定していなかった遺伝子改変動物の導入と維持管理費の捻出が必要になるため、次年度使用額に相当する予算をこれに充当し、範囲内で適切に執行する予定である。
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