研究課題/領域番号 |
16K15340
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研究機関 | 日本医科大学 |
研究代表者 |
鈴木 秀典 日本医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (30221328)
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研究分担者 |
坂井 敦 日本医科大学, 医学部, 講師 (30386156)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 変形性膝関節症 / 核酸医薬 / マイクロRNAクラスター / 神経障害性疼痛 / 一次感覚神経 / エクソソーム |
研究実績の概要 |
本研究では、核酸やタンパクを含有する膜性の小胞であるエクソソームが細胞外へと分泌され、効率よく標的細胞へ取り込まれる性質に着目し、一次感覚神経指向性エクソソームを開発することによって、神経障害性疼痛の新しい治療法の基盤形成を目指している。今年度はエクソソームに搭載する候補核酸分子の対象として、神経障害性疼痛時に変動するmicroRNA (miRNA)の同定を試みた。第5腰椎脊髄神経結紮により神経障害性疼痛を発症したラットを用いて、一次感覚神経の細胞体が存在する後根神経節において6種のmiRNAからなるmiR-17-92クラスターが長期的に発現上昇することを見出した。特にmiR-18a、miR-19a、miR-19b、miR-92aの4種のmiRNAによりそれぞれ疼痛が惹起された。個々のmiRNAに対するアンチセンスRNAをウイルスベクターにより導入して機能阻害を行ったところ、神経障害性疼痛が長期的に緩和されることが明らかになった。さらに、miR-17-92クラスターは複数の電位依存性カリウムチャネルサブユニットを一体となって発現変化させ、疼痛を惹起していることが明らかとなった。すなわち、miR-17-92クラスターの発現を抑制するアンチセンスRNAは一次感覚神経指向性のエクソソーム開発において、良い送達候補分子となる。 ヒトへの応用を検討するにあたり、搭載した低分子RNAの作用をヒト細胞において確認する必要がある。このためヒトiPS細胞から一次感覚神経細胞への分化を検討していたが、分化誘導法がほぼ確立した。 変形性膝関節症モデルにおいて、疼痛を誘発するmiRNAに関して、標的受容体が一次感覚神経の一部の存在することを二重蛍光免疫染色法によって確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
29年度の計画は、28年度の計画を引き続き行うとともに、治療用核酸の担体としての検討およびヒト化エクソソームによるヒト一次感覚神経への作用の検討であった。候補となり得る治療用核酸が複数同定できた。一次感覚神経において発現上昇するmiRNAクラスターに対してはそのアンチセンスRNAが治療候補となることを示せた。また、一次感覚神経を標的とするmiRNAも同定できた。ヒト一次感覚神経系の樹立に関してはiPS細胞からの分化系が確立できた。従って研究は概ね順調に進んでいると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
1)一次感覚神経へのエクソソームを介する核酸取り込みの検討 治療用核酸の担体としての検討を引き続き行う。一次感覚神経の初代培養細胞を用いて、作製したエクソソームの膜を蛍光標識し、一次感覚神経への取り込みとその細胞タイプを検討する。さらに、一次感覚神経に取り込まれるエクソソームの膜に発現するタンパク質分子の同定を試みる。 神経障害性疼痛モデルおよび変形性膝関節症モデル動物個体において、同定したmiRNA関連分子をエクソソームに搭載して局所もしくは全身投与し、それぞれの分子の治療効果を検討する。 2)ヒトiPS細胞から分化誘導した一次感覚神経を用いてヒト化エクソソームによるヒト一次感覚神経への作用の検討を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
29年度は送達候補分子候補となる核酸の検討に注力したため、担体であるエクソソーム膜特性については詳細な検討を30年度に行うことにした。30年度の計画として一次感覚神経に取り込まれるエクソソーム膜に発現するタンパク質分子の同定を質量分析法により網羅的に行う予定であり、分析費用が高額となるため次年度使用とした予算を充当する。
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