研究課題
痛みの評価は今まで主に逃避行動や脊髄の神経活動が指標とされているが、快・不快に加え感情や共感を含めた痛みの情動的側面、即ち、痛みの高次機能は如何に評価できるであろうか。本研究は、疼痛の本質を見極める極めて有用な評価法を開発すべく前帯状回に着目し、以下の研究を遂行した。まずは前帯状回からの麻酔下での記録・解析を行い、次いで覚醒下からの記録法の開発を行った。頭部に固定用チャンバーを固定し、定位に前帯状回の位置を確認し、記録電極刺入用の穴を開けた。動物を記録用固定装置に馴化させた後、麻酔下にパッチクランプ用記録電極を前帯状回へ刺入した。ホールセルモードでパッチクランプ記録を行い、活動電位の記録に加え、電位固定下に興奮性のシナプス後電流(Excitatory postsynaptic current, EPSC)を記録した。下肢皮膚へ生理的な感覚刺激を加え、誘起されるシナプス応答や活動電位を定量解析すると、皮膚への機械的刺激に伴ってEPSCの発生頻度が増加し、活動電位の発火頻度が上昇した。麻酔深度を変えると、麻酔深度に依存してシナプス応答や活動電位の発火が変化し、特に深度を高めるとバースト状の群発性の発火が観察された。活動電位閾値下のシナプス応答を電流固定下で記録・解析すると、麻酔深度に依存してup-stateに対してdown-stateが増加し、感覚刺激に対する応答は減弱した。また、覚醒下からの記録は困難を極めたが、安定した記録を行う上で重要な保定法の開発を行うなど、覚醒下の記録確立に向けた準備を進めた。
3: やや遅れている
覚醒下からの記録法の開発は困難で、安定した記録が得られていないが、麻酔下の記録・解析が進み対照となる基礎的データを蓄積できた。
平成28年度に引き続き覚醒下からの記録法の開発を進めるとともに、当該研究計画を遂行する。
今年度は麻酔のよる影響の解析に時間を要したため、研究計画の一部(覚醒下からの記録・開発)を次年度の計画として追加・計上したため。
覚醒下からの安定した記録法の開発を今年度の計画に追加して計画を進める。
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すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (8件) (うち国際共著 2件、 査読あり 6件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 5件、 招待講演 1件) 備考 (1件)
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