研究課題
痛みの評価は今まで主に、逃避行動や脊髄の神経活動が指標とされているが、快・不快に加え感情や共感を含めた痛みの情動的側面など疼痛の本質を見極める極めて有用な評価法を開発する必要がある。そこで、昨年度に引き続き覚醒下および麻酔下のin vivo標本を用い、脳における疼痛特有の応答を記録する手法の開発を進め、今年度は以下の研究を行った。覚醒下in vivo前帯状回からの記録法を用い、引き続き神経活動の詳細な解析を行った。行動解析で用いた刺激と同様に後肢へのvon Frey刺激を行い、生理的な機械的刺激に伴う帯状回の応答を記録した。前年度記録に成功した時と同様に逃避行動後に観察される特有の応答が確認された。しかしながら記録を行った多くの場合、後肢の逃避行動に伴う体動により記録が安定せず、定量的解析が困難となった。そこで、全身麻酔下におけるin vivo前帯状回から記録を行い、後肢へのvon Frey刺激による前帯状回の神経活動を記録した。正常動物において前帯状回ニューロンは、自発性の活動が観察され、一定の周波数でバースト状の自発活動が観察された。von Frey刺激により刺激の間中神経活動が持続した。次いで、末梢神経障害性のモデル動物を作成し、同様の解析を行った。バースト状の自発活動は正常と比較して変化は見られなかった。一方、正常に比べ、強度の弱いvon Frey刺激でも前帯状回の神経活動が持続することを見出した。以上より、覚醒下で見られたvon Frey刺激に伴う特有の応答は、記録の安定から鎮痛薬の評価等には困難であるが、麻酔下ではその応答が減弱したものの、特に、神経障害性モデルでは前帯状回ニューロンの閾値が低下し、von Frey刺激の間中持続する応答が記録された。本研究から得られた記録法は鎮痛薬の評価等に極めて有用であることが示唆された。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 5件、 招待講演 2件) 備考 (1件)
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https://www.hyo-med.ac.jp/department/neurophysiol/index.html