本研究の目的はTOF-PET用検出器用を目標として重イオンビームで実績のあるチェレンコフ光時間検出器を利用した高時間分解能光子検出器を開発するものである。 重イオン検出器で使用してきた高屈折率ガラスを媒質としたチェレンコフ光検出器について光子検出の性質を調べた。重イオン検出では時間分解能が発生光子数に依存していることがこれまで我々の研究で判明しており、Xeビームでの高エネルギービーム(β=0.69)で5psの時間分解能を達成している。光子検出では光電効果もしくはコンプトン散乱で生じた電子がチェレンコフ光を発生させる。すなわちZ=1の荷電粒子で光電効果の場合β=87となる。荷電粒子と異なり光子検出においては光電子発生効率を考慮する必要があり511keV光子を用いた時間分解能測定を行った。 高屈折ガラスは屈折率n=1.89で一辺30mmの立方体のものを光電子増倍管に直接光学接着した。先行研究では発生光子の軌跡が限定することで時間分解能が向上すると期待されたので薄い板状のものを用いたが、光子光電子変換の効率を考えて形状を選んだ。まずγ線測定で標準的に用いられるNaIシンチレータを基準に22Na線源を用いて511keV光子の検出効率を測定した。得られた結果はNaIを基準として14%のチェレンコフ光発生を確認した。 次に同形の二台の高屈折率ガラスチェレンコフ光検出器を用いた時間差スペクトルを測定した。相対的な線源の位置依存性を測定し、点線源と近似したとき数mm程度の位置分解能を確認した。時間分解能についてはFWHMで0.9ns程度とかなり大きな値となった。ガラスに入る入射光子の領域依存性からは、入射領域が小さいほど分解能が上がる傾向が確認できた。 今回の研究では形状の最適化まで至らなかったが、今後引き続きガラス形状の最適化を図り、時間分解能の向上がどこまで可能かを調べる予定である。
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