研究課題
本研究の目標は,指定難病である筋萎縮性側索硬化症(ALS)の画期的診断支援を目的とし,全身の骨格筋を対象とした,骨格筋領域内の筋線維と脂肪織の同時解析を画像工学的アプローチにより実現することであった.ALSは有効な治療法が確立されていないが,2015年より進行抑制薬が承認されており,早期発見や筋萎縮を生じる他の疾患を確実に鑑別し,適切な治療に導くことは臨床上重要である.本研究では,全身CT画像から骨格筋の領域をボリュームとして捉え,筋領域の正確な特定と領域内の脂肪織の定量的な解析を実現した.まず,胸腹部・四肢を含む人体全域を対象とした全身骨格筋の区分化自動認識を行った.さらに,区分別の骨格筋について特徴解析を行い,筋萎縮を生じる疾患毎の特徴量の統計的な違いを示した.本研究により,ALSと筋萎縮を生じる他の疾患との特徴解析を画像上の特徴であるテクスチャ(Haralickの13特徴)を用いて実現した.その結果,ALSと筋原性疾患群の間では上腕,大腿,下腿において複数の特徴量において有意差が認められた.さらに,筋の萎縮スピードの定量化技術の基礎技術として,骨格筋領域を骨格筋領域,骨格筋内脂肪領域および骨格筋と骨格筋内脂肪を合わせた筋包含領域の3領域に分類し,それぞれテクスチャ特徴の解析を行った.その結果,筋包含領域がALSとその他の萎縮を伴う筋疾患群と統計的有意差を有する特徴量が最も多く確認(37特徴)された.このことから,筋内脂肪領域と骨格筋領域を合わせた解析が骨格筋解析には有用であることが示唆された.以上のように,本研究課題では,全身CT画像を用い,骨格筋の3次元区分解析(22領域)を実現し,筋内組織を含む解析技術を初めて提案した.今後は,筋内脂肪織の経時変化に基づく予後予測の指標等の検討が必要となり,そのための大規模データの構築が必要である.
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Proc. of the Fourth International Symposium on the Project “Multidisciplinary Computational Anatomy”
巻: なし ページ: 115-123
http://www.fjt.info.gifu-u.ac.jp/
http://www.ist.aichi-pu.ac.jp/~n-kamiya/