本研究は直線加速装置の主に電子線モードを用いた高エネルギー放射線の新しい画像撮像法及び再構成法を開発することを目的としている。 本年度は加速器の電子線モードでの画像出力法とその再構成法について開発を行った。加速器から出力される電子線を電磁石で収束させ、それをさらに偏向電磁石で操作する電子線スキャン装置を開発した。その実測を行った結果、任意の照射野を形成し、計算通りの線量を照射することが可能であることが確認された。このとき出力される電子を電磁石の印加電圧を変化させ2D検出器で計測した結果、収束時に体表面に有害な低エネルギー成分が除去され、より単一エネルギーに近いものとなることも確認された。これを5 mm以上の厚さを持つ銅のターゲットに入射し、その直下に90 V程度の電圧の電磁石を配置することで、コンタミナント電子と低エネルギー光子を大幅に低減した高エネルギー光子を得ることを可能とした。 一方でこのX線を検出する専用のエネルギースペクトル解析用計測器の開発も同時に行った。これは既存の検出器と異なり、薄型半導体検出器(UVCカメラ: 4 mm × 4 mm × 20 μm)一枚の上に厚さの異なる銅ブロックを複数配置したもので、単一エネルギーの光子の場合はこれで光子のエネルギーに関係した出力が得られることを発見したため、この装置の連続エネルギーへの対応を行い、ペンシルビーム状の光子による体内の密度情報を得るアルゴリズムの開発を行った。 これらの成果は検出器の部分と体内密度分布の再構成アルゴリズムの部分で現在大学の知財部と協議し特許申請の準備を行っている。
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