研究課題/領域番号 |
16K15349
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
歳藤 利行 名古屋市立大学, 大学院医学研究科, 研究員 (30377965)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 原子核乾板 / 陽子線治療 / ガンマ線 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、原子核乾板を用いたガンマ線検出器により、がん治療用陽子線ビームと人体の反応から発生する即発ガンマ線を測定し、体内の線量分布をイメージングすることである。平成28年度においては、乾板を用いたガンマ線の検出原理を実験的に証明することが目標であった。 まず、モンテカルロシミュレーションを用いて検出器の構造や設置位置、照射する陽子線の線量を決定した。その後、名古屋大学大学院理学研究科F研の協力を得て、原子核乾板の作成、検出器の組み立てを行い、名古屋陽子線治療センターでのビーム実験、F研での現像、飛跡の読み取りという検出器の運用に必要な一連の手順を完遂した。検出器は5cmx6.25cm厚さ0.03cmの原子核乾板を10枚積層して1つのモジュールとするもので、これを5個作成、使用した。ビーム実験は2回に分けて実施した。 ガンマ線のシグナルは、原子核乾板中での電子陽電子対生成事象としてとらえられ、数MeVの、いずれも最小電離粒子である電子および陽電子の飛跡の対として計測される。現在、飛跡の読み取りデータの解析をすすめており、電子あるいは陽電子の飛跡が記録され、これらが計測可能なことを確認した。乾板には大量の散乱陽子もバックグランドとして記録されており、この中からシグナルを選別するソフトウェアの開発を進めている。 本研究のアイデア、研究の進展については、これまで国内学会、研究会2件で報告し、平成29年度に開催される国際会議2件に投稿した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
原子核乾板の作成、取扱い、飛跡の読み取りという一連の手順を完遂することができた。原子核乾板オフライン解析用ソフトウェアについても取扱いを習得した。これにより本研究の遂行に必要な基礎技術を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
検出器の設計、検討において当初は銅箔を原子核乾板の間に挟み込む設計を考えていたが、角度分解能向上の観点から陽子線治療で発生するエネルギー領域のガンマ線イメージングには不向きであり、当面は原子核乾板だけを使った検出器で研究をすすめることとした。また、今回試験した結果から銀粒子のサイズを大きくすることで、検出効率を向上する余地があることが示唆された。平成29年度には陽子線の飛程に対応した30cmスケールの検出器を開発し、さらに構造や銀粒子サイズを最適化することにより、ガンマ線イメージング用検出器としての性能を追求する。
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次年度使用額が生じた理由 |
主な理由は試薬購入費用の削減と、検出器の構造を見直し、銅箔を使用しないこととしたために消耗品費が予定より減少したことである。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度の研究結果から原子核乾板の乳剤の改良の有用性が分かったので、そのために必要な試薬の購入に充てる。
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