本研究は、焦電体と紫外レーザを用いた小型X線源の試作機を作成し,その諸特性を調査することで医療での利用を検討することが目的である。最終年度である2018年度は、最終版のX線源の試作機とX線源から発生するX線について測定・評価した。 X線源の試作機は、3×3×5 cmの直方体形状まで小型化が進んだ。X線源の外壁はアルミニウム素材で構成されており、焦電体は直径1 cm、長さ0.6 cmのLiNbO3を用いた。X線源容器の側方には直径2 cm程度の円形のプラスチック窓を設け、焦電体の劣化状態を観察できるようにした。金属ターゲットは銅を用い、X線源内は真空ポンプを用いて0.3 Paとした。紫外パルスレーザは、波長:266 nm、繰返し率:10 HzのNd:YAGレーザを用いた。 X線スペクトルアナライザーによって測定したX線スペクトルは、8.0 keVと8.9 keVにそれぞれ銅からのKα、Kβの特性X線のピークが観測できた。熱電対によって測定した焦電体の温度は、室温(約22 ℃)から次第に上昇し、紫外パルスレーザの照射5分後に37℃まで上昇した。その後、焦電体の温度は緩やかな上昇となり、紫外パルスレーザの照射30分後には39 ℃となった。X線量の測定では、紫外パルスレーザのエネルギーを変化させてGM計数管で観測した。今回の実験では、紫外パルスレーザのエネルギーが最大(40 mJ/pulse)のときのX線量が最も高くなった。しかし、35 mJ/pulse以上のレーザエネルギーを用いると焦電体への損傷も大きくなり、結晶を利用できる期間が短くなった。 本研究を通して、焦電体と紫外パルスレーザを組み合わせたX線源は小型化が可能であった。今後は、更なる小型化とX線量の増加を達成することで医療における空内照射等にも利用できるのではないかと考えている。
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